□月 ●日  No1804 それがヤツだった


幻想郷では常識でものを考えてはいけないとはよく言うが。
個人的にはただ単に顕界とは違う別の常識があると思っていただければよい。
ある国では青はすすめ、赤はよく見て進めと解釈される信号があるそうだが、
それと似たようなものだ。幻想郷というのは所謂別の国と考えるといろいろな部分でしっくりくる。


さて、今日配達途中で会った人はどうも外の世界から迷い込んだ者らしい。
お金を渡すから食べ物を分けてくれと言われたので、相場の二倍ほどの価格で販売しておいた。
こちらも慈善事業じゃない。お金と言っても顕界のお金である。お金はずいぶんとよれよれとなっていた。
まず、案内すべきは両替商ではないだろうか。


外からきた人間が博麗の巫女にあってそこの住民とふれあうなんてファンタジーがあったら
一度でいいから拝んでみたいものだ。その人は博麗の巫女とたぶん波長が合う人物なのだろう。
こういう奴がろくでもないことは私が重々承知している。


幻想郷と言っても一朝一夕でここの生活に溶け込むことはきわめて困難だ。
通常は間違いなくのたれ死にする。両替商での彼の行動が命運を分けることになる。
一応外の世界のお金とここでのお金を両替するわけだが、それで得られるお金は一週間くらい
食べるくらいのお金にしかならない。
のどの渇きを癒すにしても水道がある場所を探さないといけないし自動販売機もない。
それくらいはこの人物の気づいていることだろうと思う。


で、この人物はというと、両替商でこう聞いたのだ。
住み込みで働ける場所はないですかと。
両替商の男は私に目配せしながら、ならここはどうですか?と答えた。
合格だ。


まあそれが縁だったわけだが。
こいつがなぜ幻想郷で生き延びたのかきちんと理解しておくべきだった。
こいつは目の前で、私のミスにざまぁと答えている。
薄くなった髪の毛をカツラで隠しながら。