□月 ●日  No1877 立場逆転


幻想郷に居た人が顕界にやってきた場合、特に気をつけないと行けないのが犯罪などに
巻き込まれるケースである。たとえば交通事故を防ごうとしても、当たり屋がいれば
その限りではなく、法の隙間を縫った悪党がいるのは幻想郷も顕界も同じだ。


で、免許持ちの朝倉がその当たり屋に巻き込まれた。
実は朝倉の乗用車にはドライブレコーダーが付いているのだが、珍しく気が動転した
朝倉がそのことをすっかり忘れていたのが面白い。


妖怪達は基本的にまともな住所が無い場合が多いし、警察で無駄な詮索をされるのを
とても嫌がる。だから警察沙汰を防ぐために示談被害に遭うことが少なくない。
当然のことながら当たり屋は治療費をよこせと執拗に迫ってくる。
しかも相手が女性を知ると違う要求もしてくる馬鹿も居る。


電話越しに会話の内容が聞こえてくるが、一応朝倉も端から見ればそれなりに美人だし、
相手も良いカモのように映るのだろう。だがこいつはカモの振りをした猛獣だ。
なぜなら私は朝倉の次の言葉を聞き逃しては居なかったからだ。


「あらいい男」


この地点で朝倉は狩られる立場から狩る立場へと変わった。
この段階で、電話の出力を周囲に聞こえるモードに変更する。
腕が折れたと主張する男に対して治療術を使ったのか、「はいどうぞ」とさらりと
受け流す。


「まだいたいぞ」と言う男
「では一緒に診察を受けに行きましょう。私の知り合いは警察におりますし、ここでお話ししませんか?」


あー滅びの言葉だ。
当たり屋悲鳴をあげて逃亡を図ろうとしている模様。
もう遅い。
我々に出来ることはただ一つ。


「一刻も早くそこから逃げるんだ。」


外にも聞こえそうな大声で、叫ぶ。
朝倉の毒牙に嵌る前に。


作戦は終了した 当たり屋の貞操は守られた。 みんなよくやった。


朝倉? ドライブレコーダーがあるし大丈夫でしょ。