□月 ●日  No1920 幻想郷に大規模小売店は成り立つのか


よく聞かれることではあるのだが、何故外の世界の企業が幻想郷へと進出しないのかと
言われたことがある。たとえば大型ショッピングモールやらコンビニエンスチェーンやらが
幻想郷にやってくれば一気に覇権を取れるのではないかというわけだ。


結論から言えばそれは不可能だ。
過去にも幻想郷へ商品を売るという計画は持ち上がっているもののあっという間に消えている。
第一にモータリゼーションの問題がある。郊外店が成り立つ基本的条件は庶民の行動範囲を
増やす乗用車などが必須だ。さらに乗用車は荷物を大量に載せることができる。
幻想郷住民は空を飛んで行動範囲を伸ばすことが出来てもたくさんの荷物を運ぶことが
できないのである。


もう一つの問題は所得と、市場だ。ぶっちゃけ人里が人が多いと言っても高が知れている。
そこにある店全てを潰せばそれなりに市場になりそうな気がするが、どう考えても机上の
空論に過ぎないことである。


問題は更にある。幻想郷では所謂、対面販売が主流でセルフサービスが流行りにくいという
事情がある。これはどういうことか。 基本的に空を飛べる人間がいると導線を調節するのが
極めて困難である。もちろん天井高さを低くするなどの対策は取れるだろうが、
この調子で大量に出没するであろう問題が万引きである。
高速で飛行する妖怪や人間に逃げられると捕らえるのは困難を極めることになる。


八雲商事が基本的に商売をする人に売る手法と注文制を取るのは上記の理由があるからだ。
特に八雲商事は不足する第一次、第二次産業を補う存在であるため、第三次産業に手を出しては
産業の自給率を減らしすぎる恐れがある。 また幻想郷で第二次産業が勃興した場合は
我々はその事業から手を引くことにもなっており、自分だけが儲けるという発想は難しいのだ。


故に八雲商事は一種の公社的な特性を内包しているわけである。