□月 ●日  No2000 語り部


妖怪とは幻想の世界の生き物である。彼らが存在するには彼らの存在を保証するような人間が
必要とされる。 と妖怪達は思っている。
少なくても彼らを語り継ぐ人間が居なければ妖怪達は存在が難しいとは思われる。


妖怪達のアドバンテージとは彼らを畏れる人間の心であるので、アドバンテージがなくなれば
ただの身体能力が優れた人間に過ぎない。
ゆえに彼らは一つの手段をもって種の保存を行っているとされる。


妖怪の存在を語り継ぎ、彼らを最適化した形で生き延びさせる。
そのためには姿を変えさせるのも厭わない。
それが「語り部」という存在である。
その人物は都心のマンションに住んでいる。幽閉されているのかと思いきやそんなことはなく
一応結婚もしていて、そんでもって日曜日になるとスーパーの特売日に顔を出すような人物だ。


前から聞いていたが最初に本人を見たときはなんだこりゃと思ったものだ。
体は細いというか病的に痩せているし、服は安価で有名なところで買っている。
一応仕事はあるそうだが、ときたま護衛の連中が動いているとかそんな状態である。


今日では語り部アウトソーシングや二重化なども同時に行われている。
知識の集積によりこれらの技術は加速度的に早まっているが、それでも大きな指針を示すのは
語り部なのだという。


ボスや社長はこの人物と面識があって何度か飲み会にも参加したことがあるらしい。
ついでに言えば浅間が呼ばれたこともあるそうだが、たいそうな酒豪であり
浅間ほどではないがそれは酷い呑みっぷりなのだという。
ただし浅間と違うのは呑んでも呑まれないことであり、その点は大いに注意されたい。


余談だが 彼を拉致してどうにか出来ると思ったそこのあなた。
この人物は色々な方面からバックアップを受けているので、仮に成功した後の安全は
何も保証致しかねる。 いいところコンクリート詰めになって日本海にでも投棄されないよう
祈るべきである。