□月 ●日  No1494 コンツェルンの忘れ形見


阿礼乙女の邸宅。幻想郷縁起の整理作業時に面白い書物が発見されたので皆で閲覧することに。
片付け途中に中を見るとついつい時間が経つのを忘れるのはよくあることだが、
ここで取り上げられていたのが所謂妖怪が商売をする上での約定になっているのが興味深い。


妖怪は永い寿命故に長期間経営の実権を握ることができるが、基本的にその数は少ないため
同族経営による企業支配が行われにくいという特性がある。
妖怪達が資本的に力を付けることに危機感を感じた人間が、同族経営による企業支配
すなわち財閥を形成することで妖怪の資本に対抗しようとしたという事実が書き記されていた。


妖怪達も血縁による企業支配の真似をするため人間との交配によって妖怪の血を引く人間を
生み出す試みがなされたようである。
しかし生まれたのは人間としても妖怪としても中途半端なもので、それはしばしば社会との
軋轢を生むことも多かったと記されている。


面白かったのはこの試みは幾つかのパターンで成功していると言うことである。
しかし同族経営による企業支配ができなかったのはやはり人数が少なかったことが
大きいのではないかと思う。


阿礼乙女の記述は彼らの追跡調査に及んでおり、転生後の阿礼乙女が彼らがどうなったのかを
追いかけているのだが、やはりブランクが長いのか数組を残して足取りが潰えているようである。
その中で追跡調査が成功した人物は商売ではなく妖怪としての特性を生かした職人になっており
幻想郷で腕を振るっていると記されていた。


結果的にこの試みは中止となり、妖怪達の間でコミュニティを作り、所謂財団を形成するに至り
今に至っているようである。


この記述を呼んでふと、有る人物が目に浮かんだ。 
もしかすると"彼"はこの試みの生き残りだったのではないかということだ。
もちろん半妖だからといって寿命が永くなるとは限らないため大半は既に亡くなっているようだ。
もし私の想像が当たっていたのなら、それはあまり考えないことにしたい。
彼はあくまで彼なのだから。