今病院のベッドの上でこれを書いている。確かに自分は依頼人の浮気相手を助けるべく
魔術を使ったのだが、その後いったい何が起こったのかは把握できていない。
気がついたらベッドの上であり、雷子はベッドの傍らで寝ているのだが、椅子を見事にセッティングした
イス寝状態でとてもシュールだった。手はダランと垂れ下がり、口はバックリと開けて
ありえないほど大きないびきをかいているのだ。目が覚めたのはそのいびきのせいだ。
病室に入ってきたのは魂魄だった。入るなり耳を塞いだり、ナースが迷惑そうな顔をしていたりと
こちらもシュールだ。こちらの開口一番は「申し訳ない」だった。
とりあえずこれを起こしていいかと尋ねられたの二つ返事でOKした。
魂魄の話ではこのところこの世界でモノが暴れまわるという現象が頻発しているらしい。
雷子もまたそのバケモノのひとつであり、警戒対象のひとりだったのだが、
思ったよりも馴染んでしまっているため、一度警戒対象から外した旨も言われた。
なにより自分にとって朗報だったのはショットガンで壊した家は、魂魄のところで
もってくれるということだった。もう彼らのことは悪く云うのはよすことにする。
いやむしろ神様仏様魂魄様でも良い。
なにせこの治療費も滞在費も、ついでに現状進行中の依頼も丸く収まるというのである。
こちらは万々歳なのだ。
だが、そうなると、また別の問題が起こることが予測される。
つまり雷子は奏者によって力を得ていない、即ち今後も似たようなことが起こるというわけだ。
それにしてもショットガンを使っても斃せない敵とは一体。
疑問には魂魄が答えてくれたが、あまりの答だった。