▼月 ▼日  No243 組織と個人


組織の中にいる人間の中で、その組織が持つ力を自分の力だと勘違いする者が
後を絶たないのは毎度のことである。
我々が外の世界から来た人間でありながら妖怪たちに捕食されないのも
また企業の力である。


新入社員の一人が私に相談してきた。 
なんと外の世界からやってきた女の子を保護してしまったと言うのだ。
「だって殺されてしまうじゃないですか」という新入社員の主張を聞いて
久方ぶりに胃が痛くなった。
妖怪たちは幻想郷の人間を食べない変わりに結界の外からやってきた
人間を食べるという取引で生活している。
その契約を守らなければ、別の人間が代わりに捕食されるのだ。
「そんな契約はおかしい」と新入社員は主張するのだが、
物事を大きく変えるためには大きなエネルギーがいる。
そして物事を大きく変えたときそこに歪が起こるのだ。 そ
の歪がどういう影響を与えるのか理解していないのだろう。


私の判断では手に余ると考えて朝倉に相談してみた。 
とりあえず養殖豚を二匹放してから博麗神社経由で戻すことになる。
「自分の言うとおりだ」という新入社員は無視した。 何様のつもりだろう。
いざ、神社で外の世界に送還しようとしたところ、
その女の子は戻りたくないと言って暴れた。
いよいよ腹が立って「貴様の代わりに何も罪のない生き物が二匹死ぬんだ。 貴様に選択の余地はない」と言って
無理やり送りつけてやった。 


少し大人気ない対応であることは反省するが、自分は間違ったことをやっていないと思っている。
自分がその環境に守られていることを自覚できない人間は、護られる資格がないとさえ思っている。
新入社員はその模様を呆然と見ていたが、これもいい経験になるだろうと信じたい。