幻想郷には巨大キノコの群生地がある。
阿礼乙女の文献ではここを魔法の森と言うらしい。
だが結界の外の世界でこのようなキノコの群生地帯は存在しない。
幻想となった風景が幻想郷によみがえるとしたら、このキノコたちは
どこから来たのだろうか?
朝倉に言わせれば、世界で初めて地上を支配した生物の幻想だという。
地上に植物が現れる前、巨大菌類の時代があったというのである。
そんな馬鹿なと思い岡崎にそのことを聞いたら、確かに巨大菌類の
化石が出土しているという。
植物が生命上陸のお膳立てをする前、その植物のお膳立てをしたのは
菌類だったというのだ。
もしかすると幻想郷の生態系をくまなく調べ上げれば、古代生物史を
塗り替える大発見も可能かもしれない。
朝倉に、幻想郷にはカンブリア期の奇想天外生命たちも生きているのか聞いたら、
とっくに絶滅してると言われてしまった。
連中もとっくに冥界を行き来しているので、残っていたとしても独自の進化を遂げて
原型をとどめていないらしい。 当たり前か。
すると岡崎が私に江戸湾に行けばカンブリア期の前の生き物がまだ生きているよと
言ってきた。
にわかに信じがたい話だが顕界にそんな幻想の生き物がいるとは思いもよらなかった。
聞けば、ウミエラという生き物らしい。
驚くなかれ、6億年前三葉虫すらいなかった時代の生き物チャルニアという
生物の末裔だというのである。
これは幻想の世界も顕界をくまなく観察すれば容易に見つけ出すことができることの
好例のような気がする。
以前幻想郷と顕界の境界は我々が思っている以上に曖昧な存在ではないかと
考えたことがあるが今日の話はその考えが間違っていないことを確信させる
出来事だった。