幻想郷に住まう妖精達。彼女たちは幻想郷を構成する要素のシンボルであり大切に扱わないといけない。
頭では分かっているが、私は幻想郷に住んでいる妖精達にほとほと手を焼いている。
稗田の阿礼乙女は、妖精達は単純だから捕獲するのも容易と言うが実際のところは
とても狡猾で、私みたいな火力のバックボーンがない人間には始末が悪い相手である。
もちろん妖精達は私の命を奪おうとはしないし、私が悪戯に嵌ることを楽しみたいだけであるから
大人の態度としていちいち怒らないでいるのが一番であると考えていた。
今日、幻想郷で小兎姫に会った。
適当に世話話をしたが、彼女が妖精に悪戯されたという話を聞いたことが無いことを思いだし
何かコツがあるのではないのかと思って訪ねてみた。
小兎姫に言わせれば妖精の悪戯を回避するのは難しいことではないらしい。
妖精が介入できるのはたとえば映像だったり音だったりと自然を構成する要素の一部
分のみである。
逆を言えばそれ以外の要素をいじることはできないとも言う。
つまり、周囲の状況を五感を駆使して掴んでいれば必ずどこかで齟齬が生まれるという。
たとえば視覚的な悪戯なら、そこに漂う空気や匂いから本当にいる場所を推測し
逆算で誰が悪戯しているのかを予測できる仕組みである。
もちろんこれは直感の領域であり、幻想郷を常に注意深く観察し肌で感じないといけない。
これは難しいと小兎姫に話したら「何年幻想郷にいるんだ」と言われた。 ぐうの音も出ない。
だが、驚いたのは次の瞬間だった。
小兎姫が指をぱちんと鳴らしたら悪戯妖精三人組が落ちてきたのだ。
小兎姫似言わせると妖精は一つのことに集中していると周囲が見えなくなるらしい。
それを利用したトラップがいつの間に仕掛けていたらしい。
しかし、この妖精達は悪戯をするために近づいたわけではないようだ。
昼間からお酒を飲んでいる女性に悪戯したら全く通じなかったと言うのである。
恐らく浅間のことだとは思うが、妖精の悪戯にすら動じないとは恐るべき人である。
小兎姫は考えるそぶりをしてこう突っ込んだ。
単に浅間は酩酊していて周囲が見えていないのだろうというのだ。
周囲が見えていなければ悪戯されたことにすら気づかない。
中途半端に見えて騙されるくらいなら目を閉じ耳をふさいでいれば良いというのだ。
目から鱗が落ちた気がした。