□月 ○日  No545 工期が遅れてこのざま


幻想郷と顕界の間に建設されていた夢幻館の移転ならびに新築工事が完了したらしい。
結界の位置が流動的な幻想郷ではよくある話だが、結構お金がかかって大変である。
実は博麗神社の位置関係も都度変わるわけだがこれはこれで別の話だ。
予算が厳しいので新築された夢幻館は今までの建物と姿形は殆ど変わらない。
スタッフの話では一部住宅設備がリファインされ、構造が強化されたというが
単に前の部材が入手できなかっただけとも言う。


引っ越しに際して色々と課題が山積しているわけだが、まずはここで働いているエリーさんが厄介だ。 
下見に行ったとき、彼女の部屋を確認させて貰ったらそこには鎌やら鈍器やら
取り扱いが難しい上に重い荷物が大量に飾ってあった。
当然、刃物を損傷しないように梱包しなくてはならずかなり気を遣う。


もう一つの問題は、風見女史を誰が起こすかということだ。
半冬眠状態で抱き枕を抱いて寝ている風見女史を起こすためには完全武装で臨まないといけないだろう。
機動隊が使っているジュラルミンの楯を手配したら無下に断られた。
魂魄が合法的に女性の寝顔が見られるチャンスだとか変なことを言っていたが
ノーリスクでできるかどうかが問題だと思う。


エリーさんの刃物類は手袋を付けての作業である。
指紋を付けるとそこから刃物が痛むらしい。彼女の場合刃物は戦闘用と言うより観賞用らしく、
一度博麗の巫女との戦いでコレクションを一部放出したものの
結局刃物が勿体なくなってインターロッキングを剥がして投げつけていたらしい。
何のための武器なのだか疑問に思う。


そしてとうとう風見女史を起こすときがきた。
作戦はこうだ。まず物音立てずに進入して目覚まし時計を回収する。
三月精の能力を模したカード大活躍である。
時計の針をすすめて10分後に起きるように調整する。
元に戻して目覚まし時計がベルを鳴らせば大成功だ。


そしてもくろみ通り"彼女"は起きてくれた。
しかし、私が引っ越しを促そうと部屋をノックして中に入ったら思わず凍り付く羽目になった。
彼女は窓から外を見ていた。 タイミング最悪である。
目があって死を覚悟したが、"彼女"は「寝るからベットごと移動してくれ」と言って
また寝てしまった。


結局スタッフ総出でベットごと運ぶことに。 かけ声も上げられず
無言でベットを運び出す作業は肉体的にかなり辛かった。
筋肉痛が心配だ。