□月 ★日  No584 ゆっくりしようぜ


ここ最近なにかと忙しい毎日が続いている。
先日はパーティ絡みで大量の輸送が発生したし、今日は観測装置の新調で大忙しだ。
そんな糞忙しい最中、休日を取っている朝倉から書類を持って帰るのを忘れたから届けてくれと
連絡が来た。 自分で取りに行けと本気で思ったが、ボスが行ってこいと言うので仕方なしに
行く羽目になった。 第一移動可能な家なのだから会社の隣に住んでいればいいと思うのだが
彼女に言わせると気分が出ないらしい。


片道三十分かけてついたキャンピングカー。
出迎えたのはラフな格好をした朝倉と小兎姫だった。目のやり場に困るので退散しようとしたら
何とも言えない目つきで「ゆっくりしていってね」と言われた。
私にはどうしても「ゆっくりしね」にしか聞こえなかった。


小兎姫は「私がいるからには間違いは絶対に起こさせない」と言っている。
この一言で10倍は不安になった。
お茶やお菓子を出されたが、思いっきり警戒していたら強引に口に詰め込まされた。


改めて朝倉の部屋を見たのだが会社での机の中からは想像できないほどとても整理されている。
意外とファンシーな色彩とファブリックが目にとまった。 
部屋のセンスは決して悪くないようだ。 明るい色調のプリーツスクリーンが時間に合わせて動いて
部屋の中の明かりを千変万化に照らしているのがとてもよい。
なにより驚いたのは、キャンピングカーに術でも仕掛けているのか空間が広くなったり
狭くなったりすることだ。その気になればソファも置けるらしい。


人を呼び出しておいて何をするかと思ったら、台所掃除をやらされた。
普段掃除がしにくいレンジフード周りやコンロ周りをきれいにさせられた。
朝倉から「雑用は天才的」と言われたが少しもうれしくない。
奥からいろいろと話し声を断片的に聞くことができたが、いよいよ月ロケットの打ち上げ日が確定したらしい。
道理で忙しいわけである。


夕方になるとお酒が入り出し、二人とも不思議な踊りを踊り出している。
ファンキーな音楽が流れて洗脳されそうな錯覚に陥る。
ちょっとした目の保養になったが二人とも絡み酒がひどすぎる。
会社に連絡をしたら、直帰してよいと言われてしまった。
まだ会社に仕事が残っているのだが、整理も言付けもできていない。


夕食は鉄板焼きと焼き餃子。 何かはいっていないかと分解していたら熱いまま
口に突っ込まされて口の中を火傷した。 
ほんの少しだけ残された下心はこの段階で瓦解した。
結局家に帰れたのは午前様。 残った仕事をこなしつつ半徹夜決定の一日であった。