□月 □日  No636 幻想郷の田園風景 代かき作業


花見の季節も終わりいよいよゴールデンウイークがやってきた。
もちろん休みはない。 取引先は休みなのが何とも切ない。
最近の新入社員はゴールデンウイークがなくても、小売店だから当然でしょうと意に介さない。
文句ばかり言っている光景ばかりに出くわしていたので、とても拍子抜けする。


幻想郷では田植えに向けて幻想郷の水田では代かき作業が進行中である。
見ると妖精たちがかり出されているようだ。


水田を見るとあちらこちらにクレーターがあることに気がついた。
そのクレーターの大きさからどうやら田んぼ上で弾幕ごっこが行われていたようだ。
通常代かきの前に土を掘り起こす田起こしが行われる。
それを弾幕ごっこで代用しているようである。
生活の知恵というか、なんとも幻想郷らしい光景である。


幻想郷でも種籾から苗までは土で育てる。
水田の中に種籾をばらまかないのは夜雀や天狗達が撒いたそばから籾をついばむかららしい。
迷惑千万な奴らだがわかりやすい。


幻想郷の稲作は江戸時代の方式のままであるが、その収穫量はとても安定している。
八百万のカミたちの影響を強く受け、致命的な不作に陥りにくいらしい。
不尽の煙がよく太陽光を遮断する現象が見られるが、そのたびに丁度いい風が吹いて
空気はきちんと浄化されている。


ここで妖精たちの代かき作業を観察すると、腰を曲げる人間達と違って低空をホバリングしながら
ちまちまと大地を馴らしているのがよくわかる。
氷妖精が涙目になりながら作業をしているがこれは、途中で作業をサボって弾幕ごっこを始めてしまったため
農家のおっちゃんにげんこつを喰らわせられたかららしい。


日が傾きはじめて代かきの作業が殆ど終わると、お待ちかねのお餅タイムである。
妖精たちは代かき作業のお礼に貰える柏餅目当てで集まっていたわけだ。
我々の感覚ならなんと割の合わない仕事に見えるかも知れないが、
甘味を食べるチャンスが少ない幻想郷の住民にとっては、丸一日潰しても食べたいご馳走だったりする。


あんこだけをゆっくり食べて、お餅だけになったものを食べる妖精もいれば
あんこを凍らせてキャンディーにして食べる奴もいて様々だ。
柏餅の葉も当然食べるのが幻想郷流。
甘みと独特の香りが残る葉っぱを食べて柏餅パーティはフィナーレとなる。


今度の仕事は数日後、いよいよ田植えである。
夜になるとやかましい音楽が聞こえだして、少し賑やかになる。
田植えを祝うお囃子のリハーサルだったりするのだが、
騒音公害一歩手前の大音量でこれから色々五月蠅くなりそうだ。