□月 ●日  No687 ザ 門番ズ


紅魔館の入り口に食べ物を届けに行ったら見慣れないデーモン族と思われる娘が美鈴女史と談笑していた。
メイド長に見つかったらナイフを喰らうことになると忠告したら、なんでも湖を守る門番同士で
情報交換しているらしい。 興味が湧いたので深く突っ込みを入れたら、「どうやって仕事をさぼるか」
という議題だった。 この時点でガストローム一つ服用。


この娘一応ヴァンパイアということである。
太陽の光に対する耐性や紅魔館を守る複数のトラップを容易く突破していることから
ヴァンパイアの主人ほどではないがかなりの手練れであることは間違いない。
試しに主人は誰だと尋ねたら風見女史だった。
態度がぐるりと反転したのは言うまでもない。
しかも相手は私のことを知っていた。 話は早いがどういう風に紹介されていたのかは気になるところだ。


改めて夢幻館の話をすると、夢幻館とは顕界と幻想郷を繋ぐゆらぎがある場所を監視するために作られた場所である。
夢幻館も紅魔館は地理的条件も似ているがその役目や特性は全く違う。
所謂幻想郷に出来た顕界の大使館と言った面持ちだ。
そして最大の特徴的はうちの会社と取引はあるが、あくまで別組織であるということだ。
これはすなわち幻想郷と顕界の間を管理するところは複数あると言うことだ。
すべてが監視しあってフェイルセーフの役目を持っている。


顕界にある霊能局のバックに夢幻館があるとも言われている。
幻想郷でも顕界でも一定の力を持つ彼らだが、隙間妖怪に匹敵するほどの戦闘力を持つという風見女史が
バックにいるとなればそれも当然なのかも知れない。
月とのやりとりの時、夢幻館あくまで中立を保っていた。


娘が一人になったところを見計らって紅魔館に行った真意を聞いてみると
言葉的には躱された感はあるがどうやら情報収集のためにやってきたらしい。
ヴァンパイアの主人の態度が期待ほど変わらなかったと言っていたからだ。
その後、紅魔館の門番に情報戦のイロハを教えるべきとか
保険は用済みだから顕界に戻していいとか、好き放題言っていた。
保険とは例の神社を指しているのだろう。


美鈴女史に先ほどのヴァンパイアの話をしたら、
変な行動に出るようなら殺すつもりだったと言っていた。
談笑していると思ったら必殺の気を放っていたらしい。
殺気を感じなかったことを話したら、部外者にも感じる殺気を放つのは素人と言われた。
周囲の気配で臨戦態勢を察知されるからだそうだ。
これには感心するしかない。


月から帰ってきてもヴァンパイアの主人があまり変らないことについて話したら
にっこり微笑んで「メイド長かヴァンパイアの主人に言ったら殺す」と言われた。
なるほど必殺の気の意味が分かった。
戦わなくても気が小さい人は逃げる。
胃薬飲んで良かったと思った。