□月 ●日  No775 幻想郷における骨粗鬆症


薬屋へレントゲン機器のメンテナンス部品を納品。
薬屋の元には、顕界でも十分通用するレントゲン機器が設置してある。
何でも朝倉が薬屋と接触したときにお互いに必要性を感じて配備させたものらしい。
これには理由がある。


幻想郷の妖怪または人間にとって気をつけないといけない病気がある。
それは骨粗鬆症だ。
顕界では骨粗鬆症と言ったら年配の人の病気と認識されているかも知れない。
通常は加齢によるホルモンバランスの変動や腸管のカルシウム吸収能力低下によって引き起こされるからである。
しかし空を舞う妖怪や人間達は骨粗鬆症のリスクが極めて大きいのである。
薬屋でも骨密度計測装置がやたら充実している。
この設備に関しては顕界の技術がほぼリアルタイムで導入されている。


人間でも妖怪でもずっと空を飛んでいると骨に対する負荷が少ないまま過ごすことになる。
まるで寝たきりの状態だ。
良く宇宙空間にいると筋力が衰えて、骨がもろくなるのと同じ理屈である。
骨は負荷を与え続けないと折れやすくなるのだ。


骨粗鬆症になると、少女妖怪でありながら
腰が曲がり、骨折しやすくなったり、酷い場合は食べ物がきちんと摂取できなくなる。


幻想郷に海がないのも骨粗鬆症を加速させる要因となっている。
たとえば海藻は牛乳の7〜14倍のカルシウムを含んでいる。
この海藻不足が色々な問題を引き起こしているのである。


弾幕ごっこの時、被弾した際身代わり呪符を用いて破裂したように見せるのも
墜落しての大けがを防ぐための機構だと聞いたことがある。


所謂儚月抄プロジェクトのとき、先だって地上を訪れていたワタツキ姉を
監視する際も骨折問題がクローズアップされた。
どうにか幻想郷の結界にバックドアを作ることができても、到着早々
月の重力に慣れきった骨が何かの拍子で折れたら大変だと
関係者一同ドキドキしていたらしい。


もちろん当人もそれなりの対策を採ったと思うのだが
急な重力変化による心肺機能への影響など色々不安要素は多かったようだ。
最初に送った手紙の中にそうした問題の対策を織り込んでいたと薬屋は主張していたが
万が一途中で倒れたら大変なことになると色々すったもんだがあったそうだ。


ただしたった一人だけ骨粗鬆症から無縁な人がいる。
それはメトセラ娘だ。 彼女だけは骨粗鬆症の心配がない健康そのもの。
本人は骨折したら一度くたばる方が早いと言っていた。
色々な意味で頭が痛い話である。