□月 ●日  No836 謎の薬


幻想郷では顕界で迷信と言われたものがしばしば現実の物となる。
この日例の神社に納品に行った日のこと、ケロちゃん帽のカミ様が
何故か鏡を凝視していた。
何事かと尋ねてみたら、「油がちっとも出ない」とぼやくだけ。
おねえさんに話を聞いたらガマの油を採取するために鏡を見ているのだという。


そういえばケロちゃん帽のカミ様は一応蛙を模したカミだということを思い出した。
そんな手間をかけるなら素直に大蝦蟇あたりから油を採取した方がいいような気がする。


通常鏡に映った自分の姿に驚いて油を出すのだが、このカミ様ときたら自分の外見を
自画自賛しだして止まる様子がない。これでは油がでないのは当然だ。
実際自画自賛は美容のためにいいという話も聞くがこれでは日が暮れてしまう。
おねえさんから何とかしろと言われたから「ニキビ発見」と言ってやった。
延髄蹴りを喰らったが油は採取できた。


この油、薬屋に持って行くととんでもなく高値で買い取ってくれるとのこと。
痛む体を引きづりつつ、薬屋の元へ行ったら小瓶一個の油なのに
月の給料の半分くらいの額になって驚いた。
そんな油にどういう価値があるのだと尋ねたら、外科手術用の薬として
珍重されているらしい。
道理であの神社が破産しないわけだ。


ここでガマの油について説明すると、ガマの油とは刀傷を治す薬として
実演販売とともに販売している代物である。
顕界ではどちらかというと芸であり、皆は芸に対して
お金を支払っているようなものである。


ところが幻想郷のガマの油は破損した皮膚組織を破壊して、
新しい皮膚が製造できるようにするものらしい。
主成分はコラーゲンだそうで、よく化粧品でも使われているが
これが表皮細胞の活動を促すそうである。
ケロちゃん帽のカミ様が若々しい姿をしているのはこの油によるものらしい。
主に切り傷や手術時の止血に用いるそうでいくらあっても足りないそうだ。


「実は毎日顔に」と言いかけたブレザー兎がいつものように逆さづりになっていたのが
印象的な一日だった。