□月 ●日  No910 トレース?


不正な神の召喚術 月人がそういう召喚術とはどういうものなのか興味が湧いたので少し調べてみる。
答えは書物ではなく河童が用意した映像情報に隠されていた。
それは博麗の巫女と綿月妹の動作比較検証。 うちの会社になぜこんなものがあるのか分からないが
多分研究用かなにかなのだろう。


動きを見て気がついた。 二人の行動は全てのタイミングで一致している。
一挙一動 手の動きから指の動き 表情に至るまで一致していた。
さらに映像は二人を重ね合わせる映像へ。
表情から口の動き、とがらせ方まで一緒だと月人じゃなくてもこう言うだろう。


「真似するな」と。


朝倉に言わせれば行動のトレスは能力トレスに必要不可欠なものだという。
真似するということは決して悪いことではない。
技術は真似から始まるし、真似が高じれば技術になりうる。
ただ、真似された方は面白くないのは確かだ。
相手を真似ものと罵倒するのはよくあることだ。
その視線に耐えて自分の能力として昇華したときが勝負となる。


しかしこの検証動画は傑作だ。 見れば見るほど見事なまでにトレスしている。
このやり方を教えたのはきっと隙間妖怪だろう。
かなりの時間をかけて博麗の巫女を教育していたからだ。
朝倉に言わせればポーズ一つで本人の負荷をかなり軽減できるらしい。
また、呼び出した神様を切り離す一連の動作もきちんと覚えておくと色々楽になる。


月人が文句を言っていた件はやっぱりこの動きのトレスのことだろうか。
朝倉に尋ねたら、はあと言われた。
本当は違う理由のようだ。 もっと根本的な理由だという。


自称現人神にそのことを話したら大爆笑された。
おねえさんを呼び出すときに必ずやらなきゃいけないことを一つづつ説明されてようやく気づいた。
なんてことはない。 禊だった。
月人は自ら穢れがないと自認している。 
穢れをきちんと取り払わないで神様を呼び出したら月人に言わせれば不正に決まっていたのだ。
喉のつかえは取れたが、みんな人が悪すぎると思った。