□月 ●日  No1207 くしゃみについてのアラカルト


薬屋が珍しく付近住民とトラブル。
なんでもくしゃみについての認識に大きな違いがあるらしい。
自分にも起こりかねないトラブルなので細かく聞いてみることにした。


うちの会社でも風邪を引いたりすると幻想郷に行くことができない。
顕界では問題のないウイルスでも幻想郷では致命的なものになる場合があるからなのだが
上白沢の話を聞いたら幻想郷ならではおもしろい事情を知ることができた。


風邪を引いたらかならず起こる「くしゃみ」
顕界ではただの生理現象として片付けられるくしゃみだが幻想郷流では
違う意味で考えられている。 なんでも縁起が悪いと思われているのだ。
考えてみればくしゃみによってウイルスが飛散してさらなる感染を
引き起こしているのだから知恵と経験に基づいた知見なのだろう。


くしゃみをするとどこかで噂をしていると考えるのも
縁起が悪いという考え方の延長上である。
また幻想郷ではくしゃみをすると魂が抜けると考えられているようだ。
くしゃみをするたびに身体が弱ってくるところを見てそのように考えているに違いない。


この考え方は実は意外な形で顕界でも残っているようだ。
そもそも「くしゃみ」の語源そのものが、対応する呪文である「くさめ」から
転じていたのだという。 


話を戻そう。 


薬屋がなぜ幻想郷でちょっとしたトラブルを起こしたのか。
彼女は「くしゃみ」の語源がわからないままに、「くしゃみ」という言葉を幻想郷で使った。
幻想郷には「くしゃみ」に呪術的意味合いが若干だが残っている。
彼女が「くしゃみ」を生理現象だと説明したとしても、「くしゃみ」という言葉が既に
呪文だったのである。 
住民達に言わせれば、なに矛盾したことを言っているんだということになったわけだ。


本当に色々難儀な話であるが、こういう話があるから幻想郷は始末が悪い。