□月 ●日  No1323 幻想郷とプライバシー


顕界では顧客情報が漏れてやれ訴訟だとかやれパニックだとか色々起こっているのだが
幻想郷の場合、そういう個人情報に関する発想なんて無いので色々な意味で大変である。
顕界でもつい最近まで一般家庭の電話帳が本として出回っていたのだから
プライバシーなどの発想が本当につい最近のものであるということがお分かりいただけるだろう。


幻想郷で配達などをすればわかることだが、幻想郷住民の近所間におけるつながりはかなり強い。
その家で何が起こっているのかも概ね筒抜けである。
さらに長屋造りの家の壁はとても薄く、隣の部屋の声は普通に聞こえてしまうのである。
顕界のマンションで階上の家にいる住民の生活音が気になる話はよくあるが
そんなレベルではないのである。
それでも大きな問題とならないのは。それだけプライバシーにおおらかと言うよりは
あきらめが付いていると言えそうである。


これを踏まえた上で今日の問題がこうだ。
幻想郷出身の妖怪や人にプライバシー問題を説明しても納得してもらえないということである。
隣の声が聞こえたり、住所や電話番号がわかって何が問題なのだという具合である。


もちろん現代ではコンピューターによる情報の集積度が向上して
情報をより悪用しやすくなったという事情が存在する。
その人がどんな趣味をもってどんな行動をしているのか、情報化社会と言われる今日では
様々な記録からその人の行動を追跡することができるのである。


それでも幻想郷の住人たちは概ねこう言うのである。
「だけど、生活する分には困らない。」確かにその通りなのだが
これこそが顕界と幻想郷住人の大きなギャップであり、
顕界の住民が起こすトラブルのかなりの比率を占めているのである。


ちなみに自称現人神の家は集落から離れたところに建っているので大きな問題とならない。
顕界と同等クラスのインフラを導入しているため格差問題が生じることもさることながら
こうしたプライバシーなどのギャップも考慮に入れているのである。
面倒な話だが、こればかりは仕方ないのかもしれない。


また朝倉はいともあっさりとプライバシーの発想を受け入れたと言うが
それについては何も言うまい。