□月 ●日  No1333 聖輦船の謎


幻想郷の空を舞う聖輦船。
その実体は命蓮という人物が残した飛倉を改装したものとされる。
この船に乗っていると、魔法の力を身体に宿すことができるらしい。


私も能力持ちになれるのかとムラサ船長に尋ねたら勿論可能だと答えられたが
岡崎に尋ねたら、最低でも10年くらいは飛倉にいないと駄目らしい。
意外と不便で残念無念。もっとも一朝一夕で能力が得られたら遊覧飛行のお客が皆能力もちに
なるだろうが。


この聖輦船にはクローンが幾つか存在していると岡崎から聞いて色々驚く。
実は私が普段幻想郷に移動している列車がそうなのだという。
もともと岡崎夢美がどこからか入手した聖輦船の設計図を複製し、解析した結果が
この列車なのだという。
20代になるまえにそれを成し遂げたというのだから岡崎は相当の天才だろう。


聖輦船のボディの技術は儚月抄プロジェクトで用いられている月面ロケットと
同じである。 一見するとただの木製に見えるがシールドが張り巡らされており
十分な機密性を確保できるほか、宇宙放射線を防ぐことができるというのだから侮れない。


岡崎の話ではもともと聖輦船はこの星のものではないという。
永遠亭の姫が本当は我々の物だと主張していたのを思い出した。
彼女の言うことが正しければ、薬屋が月の使者を殺害したときに彼らが利用していた
移動手段を盗み出したということになる。
荒唐無稽な考え方だが魔法の起源が月だという薬屋の意見を聞くとあながち嘘ではないのでは
ないだろうかと思うのである。


実はムラサ船長たちが信仰のシンボルだということにしているあの聖輦船が
我々も利用しているものだと知ったら、たぶん無事じゃ済まなさそうなので
黙っていることにした。
それにしても私も列車の中で寝泊まりして10年くらい居れば魔法が身につくのであろうか。
列車の中に引きこもっていたせいで違う意味で魔法使いになったとかいうのなら
ご免被りたいところである。