□月 ●日  No1346 正体不明の病気


鵺が風邪を引いたらしい。それもかなり重篤で命蓮寺の連中皆が大騒ぎしている。
大師様が病気を治すための祈祷を始めたり皆がそれぞれの努力をしているが、いっこうに良くならない。
恐らく今まで気温が安定していた地下の生活に慣れすぎた為と思われる。
寒暖の差が体力をじわじわと蝕んでいた可能性が高い。


症状は明らかに風邪である。顔は真っ青だし、悪寒がするのか服はかなり厚着している。
咳が酷いし声も満足に出ない状況だ。これは傍目から見てもすぐに点滴を打って
病院で正しい治療をするべき状態だ。


大師様の肉体強化術が通じないのかとムラサ船長に尋ねると、出来ればこういう事態にならないと言われた。
確かにその通りだ。 
正体不明を売りにする鵺ゆえに、肉体の構造も病気のメカニズムも全て正体不明ときている。
これでは病気に対処しようがない。


誰かに呼ばれたのか、薬屋が検査機器を携えてやってくる。
が、検査しようとしたら鵺が頑強に拒んできた。 
気持ちは分からなくないが、死んでしまったら意味がないと諭しても、死んだ方がマシと言われてしまう。


どうにか鵺をよく知る人物がいないかと頭の中で思い浮かべていたら、鵺を封じるときに参画した
朝倉の存在を思い出して連絡を試みる。 
しかしさすがの朝倉も鵺の病気までは判らないらしい。 
薬屋が朝倉と電話越しで直接話す。 どうやら検査することは鵺の身体を更に弱らせることになるらしい。
正体不明で生きている彼女に検査器具は致命傷になりかねないというのである。


八方塞がりじゃないかと騒いでいると、自称現人神が通りかかってきた。
ムラサ船長が現人神の奇跡でなんとかならないかと尋ねる。
さすがに自称現人神では無理だろうと思ったら、懐から何かを取り出して飲ませようとする。
なにか凄い薬でも飛び出すのかと思い、事の成り行きを皆で観察すると
確かに鵺の体調はかなり改善した。 
流石奇跡を起こす程度の能力であるとそのときは感心した。


ちなみに飲ませた飲み物は黄色と黒のパッケージでおなじみのドリンク剤だった。
何故自称現人神がそれを持ち歩いていたのか疑問はつきない。
ともあれ取り敢えず鵺の体調は快方に向かっているのでよしとしておく。


ちなみにさすがの朝倉もこの結果にかなり驚いてるようだった。
正体不明を売りにする妖怪だけに奥は深いようだ。