□月 ●日  No1346 天狗の手形決済


河童の愚痴を聞いてやる。
なんでも鴉天狗が切る手形が焦げ付くケースが頻発しているらしい。
元々天狗が切る手形はあまり信用度が高くないことで知られており、
天狗とのコネを作る目的がなければ無理して手形を引き受ける者は少ないのが
現状である。


では何故鴉天狗が手形を切るのか?
新聞出版費用を捻出するためだ。
そもそも新聞出版は無料じゃない。 当然のことながら紙代とインク代は最低限掛かる。
写植まで用いた印刷機を使う場合はレンタル料も掛かる。
よほど内容に工夫がないと、印刷品質が低い新聞は見向きもされない事情がある。


しかし鴉天狗たちがそれだけの現金を持っているかというと色々と怪しい。
そこで支払いは手形決済で行う。 まるで顕界のシステムだが、幻想郷のシステムもこの点大きな差がない。
昔からあるルールはそのまま幻想郷でも通じるのだ。
もちろん新聞の売り上げで賄えれば良いのだが、間に合わない天狗が殆どなので多くの天狗が
サイドビジネスを持ってそれに対処している。


中にはサイドビジネスが主になってしまった天狗もいる。顕界にいる境界型の借金取りの天狗が
その例といえるだろう。彼女はすっかり借金取りのほうが板に付いてしまって新聞らしきものも
出版するが、それはもはや新聞と言うよりキャッシングサービスの広告となっている。


中には上級天狗の依頼で諜報活動まがいのことをやっている鴉天狗もいるらしい。
そういう天狗は報酬を売れない新聞に回しておりこれもじり貧すぎる。
ネット転載天狗はそういう意味では引きこもれる位サイドビジネスが成功した天狗と言える。
河童の話では何故か彼女は手形ではなく現金で支払っているのだという。
現金決済であることをいいことに、費用はかなり値切っているようだ。
違う意味での力関係を感じてしまう。


河童たちが困っているのは手形が焦げ付いた時にどう取り立てするかということである。
一応二回焦げ付くと手形が使用できない所謂倒産状態となる訳なのだが
鴉天狗から手に入る金目の物はカメラ程度しかない場合が多くとても厳しい話である。


魂魄が横から、お風呂しか有るまいと言っているが
とりあえず河童のスパナでマットに沈められた。
とにかく弾幕をばらまきながら逃げるだけは勘弁して欲しいというのが多くの関係者の
願いだったりするのである。


天狗には金を貸さないということだけ心に決めた一日である。