□月 ●日  No1401 朝倉次世代妖怪を退治する?


飲み会の次の日。まだ朝倉のアルコールが抜けきっていないと言うことで
強引に通勤電車に乗せて出社する。
本人は自動車で通勤しようとしたが、酒気帯び厳罰化の昨今それは駄目だと
みんなで説得してこの調子である。


電車に乗ることを面倒くさがった朝倉は空を飛んで出勤しようとしたが
それを力尽くで押さえる羽目になった。やっぱりお酒が残ってる。
何次会まで出たのか分からないがまだアルコールのにおいが残ってる。
まともに仕事ができるのか本気で疑問だ。


そんな折である。朝倉の目の前で「この人痴漢です」ってやってる女を
目撃した。朝からけったいな話だなと思って遠巻きに見ている。
男は自分ではないと一生懸命否定するが、変な正義感を持った人が辺りを取り囲んで
男の逃げ道を塞ぐ。


すると朝倉 話にいきなり乱入して開口一番こう言った。
「痴漢なんてされてないだろうが 嘘をつくな」
これには周りの人が目を丸くした。 犯人扱いされた男すら硬直している。
私もなんてことをしたんだとコメントに窮する。


朝倉の話では男の立ち位置では痴漢行為は不可能であること、
そして何より、痴漢行為をするなら自分が本来被害に遭うべきだと言う。
これには男も持っている鞄を落とすしかない。
周りは明らかにどん引きしている。 前者は朝倉が言うのだから間違いないのだろうが。


私も硬直していると、朝倉は私に目配せしてこう言った。
お前の目は節穴か、この女の身元を照会しろと言うのである。
名前を言うのを拒む女を朝倉が撮影、データを元に照会したのは何故か会社のデータベース。
もしかしてと思ったら案の定、彼女は妖怪だった。


PDAの中身を無言で彼女に見せると彼女の血の気はさっと抜け
素直に間違いだと認めてくれた。
生活費を稼ぐために示談金をせしめるタイプの妖怪だという。


朝倉に言わせれば、こういう妖怪がいるせいで本当に痴漢に苦しんでいる人が
きちんと救われないんだと言う。
ごもっともな話だ。 次世代型の都市伝説に便乗した妖怪がいると言うが
今回初めて見た。もしかすると注意して見ないとこういう妖怪は見逃してしまうかもしれない。
結局この女は霊能局に引き渡されることになった。 これからどうなるかは親方日の丸に
任せるとしようではないか。


お酒が入っているとは言え、流石は朝倉だと感心したが、
被害者男に痴漢をするなら私にするようにと大マジな顔で忠告しているのを見て
やっぱりこの人お酒抜けてないと思ったのだった。