□月 ●日  No1913 青蛾娘々


ゾンビ製造元が開発したとされるゾンビ 宮古芳香に世間の注目が集まっている。
まず一定レベルの知覚能力をもっている。基本的にゾンビは目が見えないが、彼女は視覚をきちんと
持っている。 さらに一定レベルの知性も持っている。大脳新皮質の動きがきちんと保たれており
主人の命令には従うが、何でも襲う構造にもなっていない。


このようなシーケンス名動きとは別のハイレベルなゾンビはこれまでのゾンビ研究者の理解を超えるものとして
注目が集まっているのだ。 さらに宮古芳香のメンテナンスを行う場面を納めようと、彼女の家には
無数の盗聴盗撮機が設置されている有様である。 もはやプライバシーもへったくれもない。
もちろん、ゾンビ製造元に盗聴盗撮機の概念なんて知るよしもないので、やりたい放題である。
度が過ぎているので、流石に霊能局が対策に乗り出している状況だ。


もっともこうなったのも彼女がゾンビの製法をまともにレクチャーしなかったらからである。
お金は貰えるから多少は応じるとしても、彼女もそれで飯を食っている手前、全部が全部
ノウハウをさらけ出すなんて事はしないのは自明である。
そういう意味では彼女は被害者と言えるだろう。


朝倉が最近静かだと思っていたら、ゾンビ製造元が苦手だと言い出してみんな驚いた。
彼女の逆アセンブル技術に皆が期待を寄せていただけにびっくりした。
魂魄がその理由について静かに語った。


リア充の壁」


まかりなりにもゾンビ製造元は既婚者である。更に言えば、彼女は自分の偽物を死体として埋葬してもらった
と述べていたが、実態は違うだろうとも言われている。
家族は、彼女を逃がすために敢えて彼女の葬式を行ったのだ。ゾンビ製造元を逃がすためである。
仙人にあこがれていたとはいえ、その当時から仙人のまねごとくらいは幾らでもやっていたのは間違いない。
家族も知らないわけではないと言うのである。


彼女を逃がすに至ったのは実践的道術は当時権力者から狙われていたという事情があるからである。
一応3馬鹿の話だからほぼ間違いないだろう。
大陸の支配者は不老長寿を願い、仙人達を集めようとしたと言われる。
つまり、彼女は自分のために逃げたのではない。家族が彼女を生かすために逃がしたというわけだ。
彼女は自分が仙人にならなければ、自分を逃がした家族に申し訳が立たないと思っただろう。
だから辛い修行にも耐えたし、人の道に反することもやってのけたと言える。


そう。朝倉にとってはそれらはまぶしすぎるのだ。


と、いうわけで宮古芳香のメカニズムが解明されるのは当面先である、
南無〜。