□月 ●日  No1975 蓬莱の薬に関するレポート

ある生え際が全軍後退した奴が、薬屋の門を叩いた。
生え際を回復させることが可能かどうかを尋ねるためだ。
結論から言えば不可能ではなかったが悲惨すぎた。


死んだ毛根細胞を再び増殖可能かどうかについては
結局のところ「蓬莱の薬」に関するテクノロジらしい。


「蓬莱の薬」一見すると不老不死の薬に見えるが、その実態は
細胞のロールバック処理である。
薬服用時の細胞形成にロールバックするのが所謂「蓬莱の薬」だ。
理論上では絶対死なないというわけでもなく、高音で蒸発するとかという
レベルなら死ねるという話であるが、実際は分からない。


細胞をロールバックするのは、人間の細胞ひとつひとつを不老不死にすることは
できないということだ。基本的に人間の細胞はいざとなったら死ぬことで
その個体を維持することができる。


「蓬莱の薬」にはもう一つ重要な機能がある。
強力な遺伝子修復機能だ。遺伝子修復酵素と遺伝子修復を司る第17染色体
P53に作用することが「蓬莱の薬」の効用として知られている。
P53とはいわば細胞の守り神と呼ばれるもので、遺伝子の破損を察知して
修復させる機能と、万が一修復に失敗したときは自死させる機能を備える。
これをアポトーシスと呼んでいる。


蓬莱の薬はP53や、遺伝子修復タンパク質に働きかけて、正しい遺伝子情報になるように
補佐をする役目を果たすようだ。この考え方は今日のガン治療における
遺伝子治療にコンセプトが近い。 遺伝子治療では細胞の自死を促すが
「蓬莱の薬」はそこから一歩前に出ていることを意味する。


こうなると、なぜあの永遠亭の姫から「蓬莱の薬」が生まれるのかを考えるのは
割りと単純だ。「蓬莱の薬」は彼女の細胞とりわけ核内にある物質こそが
本体であると仮定できる。 適当な体組織を取り出して培養すれば
簡単に「蓬莱の薬」のベースができるというわけだ。


もちろん「蓬莱の薬」はその他にもたくさんの機能があり、それらが総合されて
この薬の効能となっているのだが今回はここまで。


なお節分で発生した参上については追って報告する。