ある生え際が全軍後退した奴が、薬屋の門を叩いた。
生え際を回復させることが可能かどうかを尋ねるためだ。
結論から言えば不可能ではなかったが悲惨すぎた。
死んだ毛根細胞を再び増殖可能かどうかについては
結局のところ「蓬莱の薬」に関するテクノロジらしい。
「蓬莱の薬」一見すると不老不死の薬に見えるが、その実態は
細胞のロールバック処理である。
薬服用時の細胞形成にロールバックするのが所謂「蓬莱の薬」だ。
理論上では絶対死なないというわけでもなく、高音で蒸発するとかという
レベルなら死ねるという話であるが、実際は分からない。
細胞をロールバックするのは、人間の細胞ひとつひとつを不老不死にすることは
できないということだ。基本的に人間の細胞はいざとなったら死ぬことで
その個体を維持することができる。
「蓬莱の薬」にはもう一つ重要な機能がある。
強力な遺伝子修復機能だ。遺伝子修復酵素と遺伝子修復を司る第17染色体
P53に作用することが「蓬莱の薬」の効用として知られている。
P53とはいわば細胞の守り神と呼ばれるもので、遺伝子の破損を察知して
修復させる機能と、万が一修復に失敗したときは自死させる機能を備える。
これをアポトーシスと呼んでいる。
蓬莱の薬はP53や、遺伝子修復タンパク質に働きかけて、正しい遺伝子情報になるように
補佐をする役目を果たすようだ。この考え方は今日のガン治療における
遺伝子治療にコンセプトが近い。 遺伝子治療では細胞の自死を促すが
「蓬莱の薬」はそこから一歩前に出ていることを意味する。
こうなると、なぜあの永遠亭の姫から「蓬莱の薬」が生まれるのかを考えるのは
割りと単純だ。「蓬莱の薬」は彼女の細胞とりわけ核内にある物質こそが
本体であると仮定できる。 適当な体組織を取り出して培養すれば
簡単に「蓬莱の薬」のベースができるというわけだ。
もちろん「蓬莱の薬」はその他にもたくさんの機能があり、それらが総合されて
この薬の効能となっているのだが今回はここまで。
なお節分で発生した参上については追って報告する。