□月 ●日  No1989 過剰適応


幻想郷で雇用され、八雲商事にやってきた妖怪達にとって最大の難関はトイレである。
半分くらいが洋式である。これは顕界から派遣されてきた人たちに配慮したものだ。
まあ、実際のところ無理矢理にでも和式に慣れさせられるのが実情ではあるのだが。


朝倉理香子のケースでこの話をしてみよう。
まず流すという概念がわからない。トイレと言えばくみ取り式であり、下まで落ちるのが
あちらの常識である。まず最初に来た質問が、どうして便器が小さいのかだった。
それは奥が小さいと気づくまで暫くかかった。


当然固形物は流さない。
業を煮やし、自動的に流れる機構を入れたがそれは根本的な解決ではない。
水で流れる固形物を見た大半の妖怪は勿体ないと言う。 水が多すぎると言うのだ。


さらに問題が洋式が使えないケースが多いことである。
その逆もしかりだ。出身地によって内容が異なる。
特に温水洗浄便座に慣れるのが一大事だ。
慣れてしまえば今度は幻想郷に行きたがらなくなる。
このパターンを地でいったのが朝倉だ。 たぶん理由の半分くらい占める。


社員の中には携帯用温水洗浄機を持って行く人も居る。
気持ちは分かるがそこまでやるかと言うレベルだ。
これはこれで流れた水が地面を伝わるという大惨事が待っているからだ。
これ以上は言わない方がいいよな。


朝倉も最初の半月くらいは一生懸命和式が開くのを待っていたが
意を決して座ってみたらとても楽だったと回想している。
結局彼女は顕界に適応したと言えるが、適応しすぎて今はこの調子だ。
気持ちは分かるがな。