□月 ●日  No2236 不正


地底に住む地霊たちは幻想郷住民の嫌われ者と言われる。
そんな地底にとある厄介者の屋敷があった。心を読み取る妖怪 さとり と 無意識に入り込む妖怪 こいし である。
交渉は困難を極める。誰もがそう思っていた。年単位での交渉が必要だと思われていた。
こちらの意図はすべて筒抜け、すなわち裏表ない接触が求められた。筈だった。


この状況を打破したのは八雲商事経理部にいた男 東村 すなわちシニアチーフと呼ばれた男である。
以前から圧倒的精神防御能力を持っていることで知られている彼に白羽の矢が立った。
誰もが捨石だと思っていたが、わずか一回の交渉で全面協力をとりつける。
この驚異的ネゴシエーション能力の正体は一体何なのかということで、なら手っ取り早く本人に聞けばいいんじゃねと
言う話になった。考えてみたら私も大概だ。


本人に話を聞く、とりあえず意図は汲んでくれたそうなのでお茶を飲みながら待機。実は地味にうまいカイワレ茶。
最近癖になっているので少しくれと言ったら喜んで袋をもらったので会社で飲む予定。他人に上げる気は毛頭ない。


シニアチーフは一体彼女に何と言ったのだろうか?表裏のない接触をしたのだろうか。
彼女の口から意外な言葉が漏れた。シニアチーフの心を読むとひとつの単語が浮かび上がったという。
「定時待機」


それはどういう意味なのかと尋ねると、あなたは部外者だから教えないと言われた。
定時待機 とは どういう意味なのだろうか。
そして、彼女の口からヒントとも取れる謎の言葉が発せられた。


「三時半」
と。


この意味が何を指すのかわからない。だが一つの仮説は立てられる。彼はこの謎のキーワードを用いて
彼女を仲間に引き寄せたのだ。それはおそらく自分の仲間であるための合言葉みたいなものなのだろう。
他人の心にさらされて基本的に孤独な彼女にとってそれが甘美な響きに映ったとは考えられないか。
すなわち、彼は仲間になれとお願いしたのではなく、彼女の本質を理解したうえで仲間にしてくれと願うように
導いたともいえる。 凄い話だ。


本当の話なら