□月 ●日  No2343 技術解放


八雲商事では結構早々とGPSが導入されている。
導入される理由は割と単純で地図が容易に役に立たなくなるからだ。
妖怪がわざわざ寒い高高度を飛ぶのもその辺に理由があると言われるくらいである。
とにかく地上を移動すると容易に方向感覚が吹き飛ぶ。自分の居場所を調べるためのコンパスの類や
腕時計の類は絶対ほしいところだ。 


とかく幻想郷というのは空間がねじ曲がっているスポットというのがそこかしこにあるらしい。
それをもって結界としたり、単に妖怪が防犯目的に設置していたり、食物の乱獲を防ぐために
やっているというところもある。
無縁塚に行くとさらに香ばしい使い方になっており、いわゆる作家を缶詰にするためのタコ部屋結界
というものがあり、ここに入ると一種の法界のような快適かつ強制的な原稿ライフを送れるという。


そんなわけで八雲商事社員の端末には常にGPSが設置されているわけなのだが、
こいつをほかの妖怪たちに開放するかどうかでひと悶着があった。
実際のところは開放してもあまり問題ではないのだが、文句を言ってきたのは
結界を防犯として使っていた妖怪たちである。
結界の再構築にはお金がかかりその分の補償をしてくれるのかという話になったのだ。


当然そんな予算はうちには義理もないのでその辺はよしておこうという話になった。
八雲商事社員が問題を起こす可能性は当然あるのだけど、そうなれば
基本的に犯人は絞れるわけだからそれはそれでよいということになる。


そんなわけで暫くの間はGPS導入はないということで落ち着きそうだ。
本当に必要な妖怪には実のところルート販売で手に入っていることを考えれば
それはそれでよいかなと思う次第である。