□月 ●日  No2340 桃源郷


幻想郷のことを知りすぎた人間はどうなるのかって話だが
実際のところはどうにもならない。結局は妄想などという形で片づけられる。
意外と重要なことなのだが、幻想郷は隠すものではなく存在を抹消するものだと
誰かが言っていた。隠すというのはあるから隠すのであって、最初から存在を認識できなければ
探すことはないのだと。


そんなわけで八雲商事を辞めた人というのを追跡調査をすると大体普通の仕事に
就いていることが殆どである。たまに妖怪とコネを構築した人が妖怪相手の商売を
やっているというのが実情のようだ。


昔は記憶の改ざんなんかをやっていたこともあるというが、幻想郷滞在が長ければ
長いほど改ざん範囲が広くなりすぎて最悪自我が崩壊するとか、却って
幻想郷を探す行為に出てしまって全く意味をなさないことになるという。
これを桃源郷を再びさがした男に因んで 桃源郷現象と呼んでいたりする。


そんなわけで幻想郷に行ったことがあるからといってどうこうってことはなく
大体は顕界の生活に追われて幻想郷に居た時は遠い記憶の農村に住んでました
程度の経験としてしか残らないというのが実情なのだ。
こうなるとどこまでが幻想の世界かなんてわかるわけがない。
後になって空を飛ぶ行為にああそれが幻想だったのか程度の感慨しか生まない。


八雲商事にとって幻想郷は特別ではない。ただの一地域に過ぎないのだ。
いいところ海外出張程度の意味合いしかないのである。