■月 ●日 No5638
時に冷戦の時代の只中、うちはとある黒人男性の証言を聞いていたんや。
「甘粕のおっちゃん、こいつどう思う?」
「まあ十中八九、月面人の仕業であろう」
「せやな、今のところはこの線が濃いやろうなあ。」
うちらは、一応ミラーを挟んだ別室でこの証言を聞いていた。医者とのカウンセリングというが
この医者もうちのスタッフや、普通なら決して遅れはとらんわ。
だけどこの時は様子が違っていたんや。
彼は確かに武装をしていたなかったんや、だけど奴はカードを取り出したかと思ったら、
そこから拳銃を取り出しおった。よりによって大口径の。
「おっちゃん避けい」と言いながらうちは壁を展開した。厚み30ミリ貫通不可能なまな板や。
追ってガラスが割れる音、割れた先にまな板があるから普通に壁があるもんと錯覚する。
「こりゃあかんわ」
周囲は非常事態を示す非常ランプが点灯していた。煙が出ていたのかスプリンクラーが
作動したようで部分的に水浸しになっている。
黒人男性は泡を吹いて倒れていた。カウンセラーは、運ばれいていたが血痕が
大きすぎる。助かるかわからん。 しかも弾丸でまな板はかなりの厚みで粉砕されていた。
「まずったわ、おっちゃん」
「どうした?」
「貫通しないと踏んで、鉄筋入れてなかったで、完全にこっちの存在が察知されたわ」
やがて、救急スタッフが黒人のおっさんを運んでいく。
甘粕のおっちゃんは倒れていた黒人男性が持っていたカードを拾い上げた。
「朝倉の婆やが研究している、弾幕生成器に似ているな」
「なんやそれ」
「こっちの話だ」
甘粕のおっちゃんがカードを懐にしまい込む。重要な証拠物であるが、取り返すのは
難しそうだし、どうせ世界で最も信頼できる研究機関にもっていってくれるだろう。
思えばそれがスペルカードと呼ばれる代物との出会いだったんや。