●月 ●日 No 123 魂魄の帰還


久々に魂魄と仕事することになった。 
私は彼をエロ爺と言っているが彼の現在の外見年齢は30代半ばである。 
肉体年齢の制御に成功したというが、極端に若くしないのは外見年齢が持つ
年の功も利用したいという考えのためらしい。
妖怪桜の封印を解こうとした御馬鹿なお嬢様のせいで、周囲の結界がガタガタになった為補修するのだが、
白玉楼の地理に詳しくないため魂魄にご同席願った次第。依頼人の隙間妖怪は今頃博麗の巫女と交戦中だろう。 


ところが運悪くお庭番に発見されてしまった。 アポをとっていないこちらも悪いのだが問答無用で
切りつけて来るのは短絡的にもほどがある。 
最初から人生終了の予感だが、魂魄がすぐに私の前に立ちふさがってくれた。
相手の技量をすぐに見極めたのか、お庭番の動きが一度とまった。
そこからの攻防 互いに剣の切っ先を見切り攻撃はことごとく宙を斬る。
まるで演舞を見ているかのような錯覚に陥ってしばし呆然としてしまった。


どうこう着状態を打破するのかと思っていた矢先、魂魄の持っていた剣が宙を舞った。
魂魄にしては痛恨のミスである。 お庭番は勝利を確信しただろう。
止めをさそうとお庭番が切りかかった次の瞬間、突然地面がえぐれて私もお庭番足をとられて転倒してしまった。
空を見ると宙に舞った剣はお庭番に向けて弾幕を放っていたのである。
気が付けばお庭番の目の前には仕込み銃を持った魂魄がいた。 そのまま無言で弾丸を発射した。
一瞬何が起こったのか理解できなかった。 


「大丈夫、人間の部分に作用する催眠弾だ。 やつも腕を上げたがまだまだだな」
魂魄が満足したようにけらけら笑うが、当社最強の戦闘能力は伊達ではないことはよくわかった。
仕事はその後何事もなく完遂した。 帰りがてら未だ寝ているお庭番を送り届けた魂魄の目が
ちょっと怪しいのは見なかったことにしたいところだ。