■月 ○日  No405 幻想郷の集約農業システム


農業の繁忙期が近いため、脱穀機や米を入れる袋を霧雨店に納入する。
納入した商品はすぐに店頭に並ぶのだが、それらがあり得ない早さで
売れてしまう。 おおよそ個人で買うには高価すぎる買い物に
目を丸くしてしまう。


霧雨店の店員に話を聞くと、集落単位でまとめて道具を買っているらしい。
所謂集約農業のシステムが幻想郷では確立しているのだ。


幻想郷においては、耕地面積がすでに飽和点に達している。そこで単位面積
あたりの収穫量を増やさないと食糧自給がままならないのである。
妖怪たちが幻想郷の住民を襲わなくなったのは、結局のところ
食料を作っている人間を殺したら自分のおまんまの食い上げになるからに
他ならないのだ。


資料を拝見させてもらうと農業は事細かにスケジュール管理され、
一週間に一回の除草作業など、実は農業が時間との戦いのように
なっていることが分かる。
もっと牧歌的な風景を想像していたが、実際のところは
外の世界のサラリーマンと変わらない生活をしていたというわけだ。


休日についても同様だ。日曜日休みといった定期的な休日ではないが
その日も明確に決められていて、それを遵守しないといけない。
休日出勤はもってのほかで、守らないとペナルティも凄い。
まるで労働組合みたいなシステムは外国からのお仕着せではなく
すでに我が国に最初から根付いていたのだとわかる。


最近は農作業を手伝う妖怪も多々見られるようになったらしい。
農作業を手伝えば、その分収穫量が増えて食べ物を分けてもらえる
ことを妖怪たちが学習したからだ。
こんな調子だから、妖怪の中には人間に情が移ってなおのこと
本来の食料である人間を食べることができなくなってしまったらしい。
こんな妖怪のために我々の商売も成り立ってしまうのだ。


買い物に来たムラの代表者に商品を配達するか聞いたら、
後ろにいた少女の姿をした妖怪が大型の什器をひょいともちあげて
帰って行った。 重量的には軽く力士なみの重量をもつ代物だ。
幻想郷はある意味平和だと感じ入ってしまった。