□月 ●日  No1188 出稼ぎと人口調節弁


幻想郷も冬体制に移行する。食糧供給なども気をつけないと色々危ない時期。
秋の収穫時期が終わると幻想郷では人間の大移動が始まる。
食糧事情が厳しい家では第二子をより人口の大きい都市部へ行かせる所謂出稼ぎが起こる。
ここで幻想郷ならではのルールが発動する。


「妖怪は里の人間は襲わない」


ここでポイントとなるのは出稼ぎで移動している人間だ。
彼らは襲われる可能性があるということだ。
もちろん、行き過ぎが起こらないように自警団は存在する。
たまに人間が強い場合もあるから妖怪達も必死だ。


このシステムは幻想郷が人口過剰になったときの口減らしとして機能する。
昔の都市群では人口過密による栄養失調と疫病が人口調節弁になったと言われる。
ヤマメ女史も人口調節弁の仕事で随分稼いだと言っていた。
稼いだ金で妖怪達を養っているのである。
町中にしかいないような稗田の阿礼乙女が妖怪が人間を襲わないというが
こうした人口調節システムが隠されている事実については故意にだろうが
幻想郷縁起には書かれていない事実である。


都市部にたどり着けば今まで驚異になっていた妖怪達は守り神となる。
彼らの社会生活がなければ妖怪も満足な社会生活を送れないからだ。
このように幻想郷の農民達は一生農業をして暮らすというわけではない。
人口の統計学的分布は顕界における現代社会とそれほど大差がないのである。


うちの会社でも食料移送の規模を増やすようにしている。
今年はすでに食料が不作で、食糧事情が既に危うい状況に立ちつつあるので
ソフトランディングの必要があるのだ。
当面は不足している穀物類の輸送を強化する予定である。
ひさびさにタンカーの出番となるだろう。


一部妖怪はそろそろ凍眠の準備のため必死に食料を確保している。
私も妖怪の餌食にならないように気をつけたいところだ。
大師様のところでは炊き出しをする予定があるらしい。
一見すると良いことをしているように見えるが色々考えられるところはあるようだ。


私としては職務を確実に全うしたい。