幻想郷に物資を送り続ける列車。 結界を突破し謎の多いこの列車も
故障するときは故障する。
列車運行はこちらが連絡しなくても管制システムが停車状態を
検知して然るべき対応をしてくれる仕組みだからいつかは助けてもらえる。
慌てずに積み荷の保全をすればよいのだ。
永夜事件以降、列車の推進方式が集中方式から、各車両に動力を分散していく
方式に入れ替えが急ピッチで進められているのだが、
あいにくと今日は集中方式を採用した列車に乗ってしまった。
廃止が決まっている列車のためか、結界突破のたびに発生する疲労を
メンテナンスするのをケチっていたのか、列車が途中で止まってしまった。
こうなった場合は、とりあえずマニュアルに従い、冷蔵車や冷凍車を維持するための
発電機を動かすのだが、メンテナンス不足でなかなかエンジンがかからない。
中のものが駄目になるかと途方に暮れたそのとき氷妖精が通りかかってくれた。
ところが、プライドをかなぐり捨てて頼み込んでも気まぐれな妖精たちはなかなかうんと
言ってくれない。 彼女たちはその日の気分でものを決めるから仕方ないのだが
商品が駄目になることの焦りでまともな交渉になっていなかったのは間違いない。
助け船を出してくれたのは妖怪「レティ ホワイトロック」であった。
彼女が氷妖精にげんこつを食らわせてくれ協力の運びとなった。 とても助かる。
氷妖精が涙目になりながら冷気を送り込んでいたがお菓子を与えたら機嫌を直した。
黄色いドクター列車が到着し、お礼を言おうとしたら
「お礼はいいから、鴉天狗に私はデブじゃないと伝えてほしい」と言われた。
何か切実なものを感じて、思わず何度も相槌を打ってしまった。
余談だが、氷妖怪嬢はスタイルがいいだけで断じてデブじゃないと思う。
ただ幻想郷では食糧事情からスレンダーな人が多いのもまた事実である。
列車は、結局修理されることなく廃止されることが決まった。
思えば、ずっとお世話になってきた列車だけにとても切ない気持ちになった。