□月 □日  No609 それは困った四月馬鹿


4月といえば4月馬鹿である。 この日はちょっとしたジョークを言っていい日という。
ところが幻想郷においては4月馬鹿の意味合いがかなり違っている。
なんでも日頃の無礼や非礼をお詫びする日なのだという。


氷妖精に会って、果たしてどんな嘘が飛び出すのだろうかと期待していたのだが
いきなり「いつも迷惑をかけてご免なさい」と言われて反応に困った。
話を聞こうとしたら、「あたいは馬鹿じゃないからきちんと謝ることができるんだ」と言っていた。
おそらく上白沢の差し金であろう。


ふと考えてみると、幻想郷という土地では嘘が真になることが多々ある。
ガセネタをつかまされたと分かっていても、検証しないといけない。
何しろ嘘だと思っていた者が悉く現実だったりするのだ。
嘘を見破るための根本的な智恵が幻想郷では通用しないのである。


こうなってくるとどれが本当でどれが嘘かはわからない。
詐欺師兎の詐欺行為が通用するのもそのためだ。
物事がわかるためには色々と試してみないといけない。
この文化は妖怪たちの寿命の長さも関係しているようだ。
皆暇をもてあましているとも言えるだろう。


里香女史に話を聞くと、4月馬鹿の風習は博麗大結界分離後に広まったものなので
ここでのルールは違うと言っていた。
氷妖精は「この日は自分が最強になる日」だと言っていた。周囲の人間や妖怪たちは
みんな馬鹿になると教わったらしい。


例の神社で4月馬鹿の風習を持ち込んではいないかと不安になって
自称現人神に尋ねたら「いかなる理由があっても嘘はついてはいけない」と逆に怒られた。
ものすごい不条理感を感じた。


しかしこの日が無駄なことをする日でもある「不条理の日」という謂われを思い出して
苦笑してしまった。 自称現人神からは変人を見る目で見られたが仕方ない。