△月 □日  No451 幻想郷における公共交通機関


まずはこのキーワードから。
妖力車、人力車の妖怪バージョンと思っていただければいい。
最近この商売が脚光を浴びている。 移動時間が短くなって済むし
妖怪たちもけっこういい稼ぎになるらしい。


妖怪たちだってたまは美味しいものも食べたいしめいっぱいお洒落もしたい。
我々の手によってある程度の配給はあるものの、ゆとりある暮らしをするためには
手に職を付ける必要があるのだろう。


うちの会社にも妖力車の材料となる鋼板の受注が急増している。
鉄板は河童たちや人間の鍛冶職人によって車輪や胴体に加工される。
速度はかなりのもので、下手な機関車よりも速いらしい。
もちろん最高速度で走ったらサスペンションもない妖力車は揺れに揺れて
吐瀉物の嵐となってしまう。 


この商売が成り立つ大きな要因は、幻想郷では馬が極端に少ないことにある。
妖怪たちは概ね空を飛ぶし、馬の一部が妖怪化して乗れなくなったケースもあるからだろう。


この商売を考えた霧雨店の社長によれば、どうもヴァンパイアのお嬢様の我が儘から
この商売の着想を得たらしい。
そういえば、ヴァンパイアのお嬢様が「馬車はないのか馬車は」と駄々をこねて
さんざん馬を探し回った挙げ句、「こんな駄馬はいらない」と言われたことがあった。
確か最後には美鈴女史が馬の代わりに馬車を引いたと思う。
そのスピードたるや風の如く、とても快適な乗り心地だったらしい。
これが商売になると気づくまでそう時間はかからなかった。


もちろんこうした商売に便乗して闇タクシーを営む妖精の類もいるわけだが、
その都度治安を守るメトセラ娘の業火に焼かれているようだ。 
阿礼乙女が拳銃突きつけながら妖精たちをただ働きさせていた光景には
絶句するしかなかったが、自業自得の部分もあるので放置することにした。