□月 ★日  No551 リベンジならず


藪蛇という言葉は今日のためにあるのだとつくづく思う。


とうとうこの日がやってきた。 今日は恐怖の節分である。
昨年の豆集中砲火で体中に痣ができたあの思い出にリベンジする日が来たのだ。
今日のために投資した額を考えるとたちまち鬱になるが
しかあし、身を守るためには絶対必要な投資である。


厚手のズボンと防弾チョッキを羽織っていざ出陣
香霖堂に河童製のフルフェイスのヘルメットとプロテクターを
注文しておいたので防御は完璧である。


会社に到着、目指すは妖怪の山社屋 今日のメインイベント会場である。
会場には鬼娘をはじめとして昨年よりも多くの人妖が参加することになっている。
どうせイベントをするのだから大々的にやろうという朝倉の提案によるものだ。
予算がついたのでばらまく大豆も鬼娘が反応しないように丁寧に糖衣をつけている
念の入れようである。


会場に到着、里香女史が人型戦車を用意していた。
戦争でもする気かと思いきや、腕のエアガンに豆が装填してあった。
誰が見てもマンハントである。
香霖から防御装備を受け取る。頑張れというエールを受けて少し元気が出る。 


鬼娘達と挨拶を済ませると、目の前に鬼の面を被った朝倉を発見した。
私の身なりを見て開口一番「私の代わりに鬼役を買って出てくれたのか」と言われた。
話を聞くと、今回のイベントは鬼娘へ降りかかる「鬼は外」の念を寄り代に被せてしまうのが
目的だという。 外勤が多くて社内通達をよく読んでなかったのはまずかった。 
鬼の面を被ったまま上機嫌かつ大きな声で「上司思いの部下を持って幸せだ」と言われ
引っ込みがつかなくなった。 まさに藪蛇である。


結局二人で的になることになった。 案の定痛そうな攻撃が来ると朝倉が人の背中を
むんずと掴んで楯にしたので結局昨年並みに豆を喰らうことになった。
抗議したら、「私の柔肌に痣ができたらどうするんだ」と言われた。
よく見ると朝倉に対してだけ豆はあまり力を入れて投げていない様子だった。
皆報復が怖いのだろう。 里香女史のみが殺気みなぎる動きで容赦なく弾丸をぶっ放していたが
それはそれである。