□月 ★日  No552 幻想郷のUMA


香霖に頼まれてとある生き物の処置について考えることになった。
その生き物とは槌の子である。顕界でもUMAとして有名な槌の子は、うちの会社でも
結構いわくつきで取り上げられる。


この生き物は基本的に大食らいで知られているが、その食欲たるや
村の食料庫を食い荒らし飢饉を招くらしい。
外見上ではラブリーな蛇という形容がしっくりくるが、小型の動植物を平気で食べてしまうため
真っ先に処理しないといけない生き物である。
テレビでよく槌の子ブームが紹介されるが、本当の理由は食べ物を食い荒らす槌の子を狩るのが
目的と言われる。 顕界にいる槌の子は幻想郷にいるときと比べて食欲は緩和されるが
それでも危険きわまりない生き物である。


問題は霧雨のご息女が捕まえた槌の子をどうするかということだ。
当然殺すのはまずい。 かといってそのまま放置するのもまずい。
また槌の子はカミ様の使いでもある。いつまでも捕獲し続けると政治的にまずい。
それが私がここに派遣された理由でもある。


いろいろ思案した挙げ句逃がすことに決定した。
ただ、そのまま逃がすとご息女の機嫌を損ねるため、あくまで彼女の落ち度で逃げたことに
しないといけない。


ここ数日霧雨のご息女も香霖のところへたかりに来ている。
彼女とて槌の子に食べ物を分け与えていたら食べ物が不足するのは当然のことだ。
そこで、食べ物を探す名目で森に入り、槌の子を食べ物でおびき寄せることになった。


妖精直伝の光学迷彩で姿を隠しつつ、餌をセット。
作戦はうまくいくかに見えたが、槌の子が向かってきたのはなんと私だった。
今にして思えば食べ物の臭いに釣られて向かってきているわけで、さっさと餌を捨てれば良いのに
そこまで気が回らずただ逃げまくる。
そこに、霧雨のご息女が追いついて、「自分のペットをさらうとはどういう了見だ」と言われ
更にピンチに陥った。


どうにか弁解しようとあの手この手で理由を述べたが納得してもらえず、魔法で焼き尽くされそうに
なったわけだが、ふと追っていたはずの槌の子がやってこないことに気づいて指摘してやったら
なんとか解放された。 餌袋をよくよく調べてみると、どうやら必死に逃げていたときに
底をやぶいていたらしい。 餌が途中で落ちていたようだ。


その後泣いて戻ってきたご息女の話を聞いて任務完了である。
退治されるかも知れないという話だったが、その後、例の神社に槌の子が出現していたのを
自称現人神が興奮気味に話していたのでたぶん無事でいるのだろう。
もう二度とUMA絡みはごめんだ。