霧雨のご息女に食べ物を届けに行く。 注文されたものに色をつける。霧雨店の社長の依頼でもある。
部屋の中は相変わらず雑然としている。 香霖といい勝負だ。
掃除したい気持ちがこみ上げてくるが今日は我慢。 つきあっていたら終わるものも終わらなくなる。
が、しかしとてつもなくクリティカルなものに目がとまった。
手紙の山である。 霧雨のご息女がアルバイトでちょっとした郵便業務をしていたときがあったのだが
まさか手紙を家に置きっぱなしにするとは思わなかった。
ご息女の目を盗んで手紙の宛先をチェックする。
すると奇妙なことに気がついた。 その宛先は幻想郷の住所ではない。 結界の外の住所だったのだ。
これでは届けられるわけがない。
ほかの手紙も調べてみても同じ結果だった。
霧雨のご息女にさりげなく手紙のことを聞いたら、やはり知らない住所だったために送ることができない
ということだった。 それにしても量が多い。
ご息女に許可をとって手紙を全部回収した。 営業所に戻って住所照会をすると確かにその場所に家がある。
検疫用に使っている中を見る装置で手紙の内容を一読すると、そこには
自分が無事なことや家族や肉親のことを気遣う内容が延々と書かれていた。
もちろんこの手紙が幻想郷の外に届くわけがない。 しかし書かずにはいられなかったのだろうか。
処分に困っていたところ、里香女史が手紙を全部開封しろと言う。
これを全部スキャナで取り込めというのだ。 あまりの枚数で陰鬱になってくる。
手紙自体をを届けることはできないがデータなら幻想郷の外に持ち出せるというのである。
取り込み作業は深夜までかかったが、手紙の内容は会社で印刷されて宅急便で送ることになったらしい。
里香女史がなぜこういうことを指示したのかはわからない。 尋ねたら
「3月はいろいろなものを流す季節」と言われた。
また手紙を送るのかと聞いたら、今回だけは特別で以後は焼却処分されるだろうということだった。
送った後の手紙の画像ファイルも削除となった。 ふと削除漏れしたものに目をやったら
私の知る人物から友人たちにむけた手紙を見つけてしまった。
可能な限り目で焼き付けて、光ディスク丸ごと電子レンジに突っ込んだ。