□月 □日  No622 これはひどい異変


博麗の巫女が月に向かって早数日。朝倉の話によると高天原を突破しない
バイパスを通って月に向かっているらしい。
こんな時に異変が起こったら大変なことになると思っていた矢先に、
怪我をした白狼天狗に出くわした。
妖怪の山に侵入者が来たのか。 
事情を聞いてみると、凄い異臭で思わず高度が下がりそのまま木に激突したらしい。
目に涙をためている天狗には悪いがほっと胸をなで下ろした。


異臭がするという現場へと急行する。 
しばらく歩くとルーミアが倒れていた。
介抱すると、久々に人間の死体を見つけて食べようと近づいたら強烈な臭いが
立ちこめて近寄れなかったらしい。


白狼天狗の通報を受けた鴉天狗がやってくる。位の高さを示す煌びやかな反物を身につけた
一見すると女子高生のような娘である。
事情を説明すると、天狗の扇で風を起こしながら進もうと提案された。
鴉天狗としても異変の原因をつかんでおかないといけない事情があるのだろう。
万が一の時は自称現人神と風見女史が出張ることになっている。この二人ならそうそう負けることは無いと想う。


そしてとうとう臭いの原因をつかんだ。 そこには体中緑色に染まった男の死体。
さすがにこれを見たルーミアが、食べられないと匙を投げた。 
鴉天狗はあくまでクールにこれじゃ他の妖怪も無理だと言う。
体中から立ちこめる異臭。 鴉天狗は火山を守る結界の一部が流れ出した物だと説明していた。
私は周囲を捜索。 薬物を混ぜていないかを確認するが、その類は確認されなかった。
代わりに見つかったのは袋に入った布きれである。
何となく見覚えがある物体。


それは靴下だった。
誰の靴下かは見当がつく。おそらくここに書くだけでも殺されそうだから書けない。
この男は靴下の臭いで自殺を図ったのだろうか? だとすれば相当間抜けな死に様である。
顕界でもトイレ用洗剤をなにかと混ぜて発生する毒ガスを吸って自殺するアホが後を絶たないそうだが
はっきりいってとっても迷惑である。


幻想郷に流れ着く物の中には自殺者の死体も混じっているのだが
そこに異臭を放つ死体がやってきても扱いに困る。
いくら妖怪たちが人間を食べるからと言って、糞の臭いが立ちこめる食い物を誰が好んで食べるのだろうか。
せいぜいできても荼毘に付すしかない。


だが、問題は死んだ奴だ。こいつへのペナルティはある意味爆笑の渦へと周囲を巻き込む。
中有の道では死んだばかりの亡者が三途の川に向かって歩いていくのだが、こうして毒ガス自殺などをすると
その顔色のまま中有の道を歩くことになってしまい、最高に赤っ恥を掻く。
しかもその恥ずかしさのせいで、消滅もままならず最後は死神に緑色になった肌を笑われるという。
はっきり言って死より恐ろしい罰だと想う。


と、言うわけで自殺して幻想郷に逝こうと考える馬鹿は、恥をまき散らすリスクをきちんと考えていただきたい物だ。
ちなみにあの靴下は即焼却した。
あれは兵器だ。 月に数足送りつけただけでたぶん月を大混乱に陥れられるだろう。
最初からロケットに靴下を満載すればいいのだろうが、たぶん靴下の持ち主のプライドが赦さないと思う。