□月 □日  No633 幻想郷の医療 そして

薬屋が経営している病院が毎度の事ながら経営危機に直面しているらしい。
うちへの売掛金支払いも滞りがちなのでここで経営の立て直しを試みることにした。


カルテと出納帳を取り上げて精査すると、診療費用を無料にして薬でその費用を取り返す
ビジネスモデルが浮かび上がってきた。
ところが、この薬売りに問題がある。 薬を主に売っているのはブレザー兎なのだが
いざお金を回収する段になると、相手の事情に同情してしまってお金を取らないことが多いのだ。
埒があかないので同行して実際にどのようにお金を回収しているのか確かめることにした。


結論から言えば、誰が見てもお金が払えそうでない人に薬を売ってしまっていた。
幻想郷では働くことができなければ、そのまま野垂れ死にするのが普通である。
だが、薬屋の高度な薬はその人の寿命を延ばし続けていた。


栄養状態が悪いとあらば、食べ物ではなく栄養剤を与えてしまう。
確かに体力は回復するが根本的な問題は何一つ解決しない。
しかも対処療法的に薬を投与しているため、確かに効果はあるのだが
相手にとって苦しむ時間ばかり延ばしている印象すらある。
しかしながら薬を絶つことはその人の運命を奪うことにも繋がる。
お金は回収できないが投資額ばかりが増え続けているのである。


ブレザー兎もこのまま薬を絶てば、その人の命を奪うことと同じだから何もできないと言う。
だが、薬屋の診療所はボランティアではない。 そんな調子では本当に医療が必要な人に
薬が行き渡らない可能性が高い。


幻想郷の既存システムで薬屋の収入を確保する方法を考えたところ、診療所のあるムラの
隣ムラにおもしろいシステムを採っているところを発見した。
そこでは、収入に応じて一定額を医者に納めることで医療費を減免するシステムが採られていたのである。
「定札」と呼ばれているシステムである。 主に農村部で決められた考え方のようだ。


名主さんにこの話をしたところ、同意してもらえた。 
ブレザー兎が医療費を取っていないことは知られていたことだから当然の事かも知れない。
とりあえず、薬屋には周辺住民から食べ物類が送られることになりそうだ。
これを売ってお金に換えて当面の売掛金を回収する見込みである。


それにしても今後ともこうした薬漬けの人々をそのままにしておいていいものだろうか
どうしていいものか分からぬまま取りあえず目的は達成したと言える。