□月 ●日  No934 システムの完成


隙間妖怪について言及しておきたい。
うちの会社では週に一回妖怪の対策に関する講義がある。 講義をきちんと受けないと酷い目に遭うため
どんなに体調不良でも出席している。 
この時期になると花粉症であちこちでくしゃみが聞こえてくるが、それでも授業はきちんと受けている。


その中で隙間妖怪について言及があった。
妖怪の中で社会システム構築が出来る妖怪であるという話である。
そもそも幻想郷に住む妖怪は極端な個人主義である。
社会的つながりが無くても食糧を自給できるし、物質的な問題もある程度なら理力でカバーできる。
もちろん社会があれば生活が便利になるのも知っている。
だがこれでは、同族同志の群れが関の山だ。社会性からは程遠い。

 
妖怪が迎合するのは戦闘をして相手の能力を認めた時が殆どである。
ところが通常の決闘では決着がついた段階で相手を滅ぼしてしまうことが多々あった。
そこで相手を滅ぼさずに相手を認めるためのシステムの構築が急務となったのである。
相手を潰す決闘の仕方では何れ標的が幻想郷に向けられる可能性が多々あったからというのもあるようだ。
丁度アレルギーが、自分自身の抗体が自分自身の体を攻撃するのと同じ理屈である。


現代のルールを使おうと提唱した者の一人、隙間妖怪は幻想郷では数少なく
負け方を知っている妖怪であるとボスが述べていた。
つまり自分が滅ばなくてもいい負け方を見いだした妖怪だというのである。
生き延びるためなら誇りも容易に捨てることができる。 これはある意味始末が悪い存在だ。
戦争に負けたが、奴隷にならないという考え方だ。


妖怪が人間に追い詰められたときに隙間妖怪は考えた。
何故人間は強くなれたのか、それは社会システムを構築していざとなったら協力できる体制を作ったからと結論された。 
それは弱者のシステムだ。 自分が弱いと分かったからこそ可能となるシステムである。
では単独で強い妖怪たちはどうか? ルールで縛って弱体化したほうがいいと言うことになったのだという。


近々、自称現人神も実戦に投入されるという話が出て周囲からどよめきが走った。
理論上可能だとはいえ、外の世界の人間が直接戦闘するのはやはり不安がよぎるものだ。
だが、隙間妖怪は今回の件でカードシステムの完成を見ることができるだろうと述べていることも明らかになった。


個人的にはまた色々大変になりそうな按配だ。
お願いだからこれ以上ドンパチはやってもらいたくないのだが
こういうシステムを採用した以上、それは無理な相談かも知れない。