□月 ●日  No1241 ボキャブラリギャップ


上白沢の私塾に季節外れの教材納品。
最近主要な新入りが入っていないと思ったら、こちらの教材は大師様に使うものだそうだ。
1000年間ほど封じられていた大師様たちだ。 喋るのはどうにか現代語にあわせる事が
できたのだが、書き物で混乱が見られるらしい。


博麗の巫女達と会話したときは彼女なりに必死だったらしい。
法界に封じられていたと言っても一応外部との通話は不可能ではなかったらしく
それでそれなりに最新の言葉は学べたと言うが、ちょっと喋りだすと途端に意味不明の言葉となる。
かつて私が幻想郷で起こった昔の意味合い問題が彼女たちにも起こっている。


とにかく大師様の寺は金だけはあるので、経営があまり芳しくない上白沢が
そこそこ高額の報酬でレクチャーすることになった。
人はこれをぼったくりと呼ぶ。


子供達が帰った後、大師様軍団が学習と相成ったので様子を見に行ったら
黒板に書かれているのは下ネタのオンパレードで壮大にずっこけた。
語彙を増やすためとはいえ、必要有るのかと二人に問うたら
大まじめな顔で「必要」と言い切られた。


そういえばメトセラ娘から上白沢はムッツリであるという話をちらと聞いたような
覚えがある。 大師様も朝倉とつるむことがあるから恐らくそっちの気がないわけではない。
毘沙門天の戒律から考えると少しどころかかなり外れているような気がしなくもない。


そんなことを頭の中でぐるぐると思いを巡らせていたら
一輪嬢より幻想郷の性教育を考える「槍満会」運営に必要なものだったと指摘され
自分の不明を恥じることになった。 


とはいえ、大師様にとって1000年も慣れ親しんだ言葉を捨てて
現代の言葉にするのは相当のストレスのようだ。まるで外国語を学んでいるような気分らしい。
普通の言葉なら問題ないが、「ら」抜き言葉のようなくだけた表現になると
困った表情になる。 
スラングや他国言語の類が絡むともっと分からない。
何しろヴァンパイアって言葉が通じないのだから上白沢も大変である。
妖怪たちはその過渡期を経験しているから問題ないのだが、長時間封じられてると
そう言うことが起こるのだろう。 


子供の教材は問題ないが、足りない語彙を補うため、ノーレッジ女史の図書室から
百科事典の類を命蓮寺に運び出すことになった。
今でこそインターネットで調べられるこれら用語だが、本にまとめると大変な厚さである。
ムラサ船長が一体何事だというような困惑した表情を見せていた。


1000年のギャップを埋めるため当面はこれら辞典のお世話になるという大師様一行。
彼女たちが現代の言葉に慣れ親しむまではしばらく掛かりそうである。