□月 ●日  No1369 名作に隠されたアナグラム


紅魔館に何故かガリバー旅行記が置いてあって少々驚く。
もっともこちらは原題なので、デーモンの司書さんに言われるまで気づかなかった。


皆はガリバー旅行記をご存じだろうか?
英国のとある風刺作家が書いた現代にも通じる名作である。
現代でこそ子供向け書籍として所謂お伽噺の類として知られるこの物語が
幻想郷と密接に繋がっているという事実を聞かされた。


作中、主人公であるガリバーが訪れた土地が悉く当時まだ完全隔離されていなかった
幻想郷にある土地と符合するのである。
実際、空飛ぶ島の国は天界そっくりであるし、冥界を彷彿とさせる描写もある。
また火星の衛星が二つあることを予言してみたりと妙な科学描写もある。


また、不死でありながら不老ではなかった老人の描写は当時の魔法技術水準としては
極めて正確と言われている。
当時の魔法技術は横の繋がりが希薄で、特定の効能を導き出す魔術が生まれても
複合効果までは至らないケースが多かった。
老化制御はできても不死に至らなかった大師様は好例と言えるだろう。


ちなみに、現代における魔法技術の爛熟が実は現代の通信技術の発展と
無関係でないことはあまり知られていない。
魔法技術における横の繋がりが強まったのは寧ろ魔法技術がネットを
有効活用したからと言われている。


魔法店のエレン嬢の話だとこの話には少々裏があるようである。
当時、妖怪達は英国の植民地主義に手を焼いていたらしい。
これまで覇権国家こそあったものの、幻想の世界にとってはそれほど脅威ではなかった。
しかし、この頃には幻想の世界への浸食が少しづつだが始まっていたらしい。


当時、強力な経済力という対抗手段を持ち合わせていなかった妖怪達は
この作品を通して、幻想郷の存在を臭わせつつ強烈な風刺を行ったというのである。
当時の妖怪達が人間達にどう対抗していたのかを示す資料として旅行記を読めば
ちょっとした発見があるかも知れない。