□月 ●日  No1146 台風がやってきた


当然のことだが幻想郷にも台風はやってくる。 
台風の場合は当然ながら野外での飛行も弾幕ごっこも禁止である。
意地でも弾幕ごっこがやりたい連中は地下で暴れるか紅魔館辺りで暴れるしかない。
もっとも台風になったら誰も皆家に籠もることになるだろう。


幻想郷各地でも戸が飛ばされないように、板をたすき掛けのように取り付けているところが
多数ある。 幻想郷の雨戸は木の板であり木の溝の中を滑っているに過ぎないため
油断すると吹き飛ばされる可能性があるからだ。
鬼たちが台風対策の大工仕事で結構荒稼ぎしているらしい。


大師様に台風が来るので発掘船を出すのをやめるように頼むと、すでに一輪嬢からも同じことを
言われていたそうで、船はすでに地上に置かれていた。
何故、普通の人間が台風の接近を察知できるのかと尋ねられたので、今の天気予報システムのことを
話すと目をむいて驚いていた。 
きっと妖怪たちや人間が暴風のせいで住処を追われる人が出るに違いないということで、受け入れ先の準備を
することになる。
とりあえず容積的にもキャパがあり灌水にも耐えられる発掘船を臨時避難先とすることにした。


台風がやってくるのは夜半と言うことで特に危ない低地に住む人を避難させる。
驚いたことに家畜を入れるスペースまで用意されていた。 それだけ船が広いと言うことでもある。
魔法を使って空間を押し広げているに違いない。
それにしても大師様一味の段取りのスムーズさには驚くしかない。 人や家畜の誘導は
極めて速やかに行われている。 この点については私よりもずっとプロフェッショナルと言えるだろう。


避難している集落数十名の胃袋のため、とりあえず乾麺を用意することにした。
うちの会社で備蓄している非常用食糧である、
お湯を掛ければ三分ほどで食べられると聞いた大師様一味はきょとんとしていた。
早速実演して、器に盛ってあげると本当に食べられるのかと半信半疑だった。


乾麺は急遽用意された河童ラーメンである。 とてもじゃないがまずくて食えたものではない。
理由は単純、お肉が入っていないからだ。
しかし本人にすればまずいどころかとても美味いという答えを貰った。
昔の人間の価値観は分からないと色々思ってしまった。