儚月抄プロジェクト

□月 ●日  No1209 トロイの木馬

「月兎が月に戻っただと、正気か?」 技術部に在籍する岡崎教授の話に魂魄は耳を疑った。 荒事を繰り返しながら必死に幻想郷に運んだ兎をあっさりと月の都に返したのである。 あまりといえばあまりの利用方法に魂魄はどうしても納得いかなかった。 「それが…

□月 ●日  No1197 冴月麟

八雲商事の夜。 大半の社員が帰宅し、経費節減のため電気も消され静けさに包まれた社内で ボスこと魅魔と呼ばれた女性は執務を続けていた。 周囲が真っ暗な環境は彼女にとって慣れたものであるが、 まるで洞窟のような雰囲気は一種不気味さすら感じさせるも…

□月 ●日  No1185 ゲイツ記

今から約半世紀前のことだ。 人類は地球外生命体がいるかもしれないという事実に 気づき始めた。 それは人類にとって大いなる一歩である。 地球外の生命体を認識できること。 これができるようになって我々は外宇宙の知識に 触れるための第一段階をクリアー…

□月 ●日  No1161 -

千年ぶりと言うべきかな。 長い期間幽閉されていて、精神の変調を来していないとは大した精神力だ。 まさかあの男の娘を人質に取るとはなかなか上手いことを考えるではないか。 だがその方法でお前が開放されるとは考えない方がいい。 あの男は法界から娘を…

□月 ●日  No1147 真の間謀

季節は巡り冬の幻想郷。 今年の冬は特に寒冷化が厳しい年となった。 この日の紅魔館はうっすらと雪化粧が施されており、例年以上の寒さを演出していたと言える。 そんな紅魔館で幻想郷最大級のパーティが開催されることになった。 紅魔館の主人であるレミリ…

□月 ●日  No1131 OOPARTS

「おい、星どうなっているんだ。」 幻想郷地下奥深くに埋まって言う船を発掘すべく毘沙門天の弟子を名乗る高位妖怪に 道案内を依頼していた八雲商事発掘部隊と魂魄 北白河の一行はすでに制圧されていた付近を 見て毒づいた。 しかも何故か外の世界の武装をし…

□月 ●日  No1111 東の国の眠れない夜 後編

夜の守矢神社。 風祝の防衛戦は未だ続いていた。 自衛隊出身の軍隊の特性として、カバーポジションの巧さがある。 専守防衛を旨とする軍隊では有効だが戦況が硬直しやすくなる。 術式が終わるまでは約30分ほど、相手は恐らく守矢神社の目的を知らない筈だ…

□月 ●日  No1110  東の国の眠れない夜 前編

外の世界は不便な物が一杯だと魂魄妖忌は思う。 特にこの「ヘリコプター」という乗り物はいただけない。 音は五月蠅いし、速度も自分で飛ぶのとどっこいどっこいである。 しかし外の世界にいる以上は現地のルールに従わないとならぬ。 妖忌はいつになく焦っ…

□月 ●日  No1101 Incoming

それはまさにうだるような熱帯夜であった。 うっそうと生い茂るとある竹林の中をローブを身に纏った長身の女が"進んで"いた。 獣道すらない竹林はしばしば方向感覚を狂わせるものであるが その女の動きには迷いはまったくなかった。 そのが場所は現地の者に…

□月 ●日  No1078 遭遇

「迷った。」 八雲商事営業部にこの度赴任したばかりの浅間伊佐美は毒づいた。 商品輸送列車から降りてちょっと幻想郷を散策するつもりだった。 眼前に広がるは延々と連なる竹林。 幻想郷を少々侮っていた。 「帰るのはなんとかなるとしても、問題はアルコー…

□月 ●日  No1064 クローム襲撃

「貴女が十六夜咲夜さんですね。」 人が寝静まろうとする夜間、月明かりが当たりを照らす時間 咲夜は香霖堂での捜し物を終えて一路紅魔館へ戻ろうとしていた。 そこに現れたのは、幻想郷ではあまりに奇異な姿をした女性。 全身を白づくめのコートらしきもの…

□月 ●日  No1052 相応しい連中

秋の長雨が続き、夏の暑さを洗い流す自然現象が各地で見られるこの頃。 政府霊能局局長である久保田は部下である小兎姫の報告を聞きながら思案していた。 我々のことを穢れた民族として忌み嫌っている月の民が何故今頃になって干渉を試みているのか。 彼らの…

□月 ●日  No1038 Count Zero

岡崎夢美は思案した。紅の吸血鬼たちを安全に月まで送り届ける必要があった。 それはすなわち自分が今ここにいる理由でもあった。 八雲商事の研究室。 複数あるうちの一つ。 傍から見れば鉄道研究所にしか見えないが、幻想郷との二層構造になっており 位相変…

□月 ●日  No1008 Mona-Lisa Overdrive #3

「そちらに境界型妖怪が向かっている 注意しなさい」 地上に出た魂魄、甘粕、月兎の三人を出迎えたのは携帯電話からの通信であった。 境界型妖怪とは、妖怪が棲まう土地「幻想郷」とこの顕界両方に出没する妖怪のことだ。 妖怪の運動能力を有していながら外…

□月 ●日  No986 Mona-Lisa Overdrive #2

「誰がそれに乗れと言ったかしら」 列車に乗り込もうとした三人を少女が制した。 追っ手を振り切り、地下鉄の線路に辿り付いた「魂魄」「甘粕」「月兎」の前に現れたのは 4輛編成の列車であった。 時間がなかった。魂魄は月兎を逃がすため吹き抜けから落ち…

□月 ●日  No982 Mona-Lisa OverDrive.

魂魄妖忌は焦っていた。頭をフル回転し、事態を収拾しないといけなくなった。 魂魄妖忌は剣の達人である。しかし、今居る場所にとってそれが何のメリットになろう。 今回の仕事は彼にとって専門外過ぎた。標的を斃す仕事は得意だが護る仕事はノウハウが少な…

□月 ●日  No978 60yeas ago.

月に知的生命体が存在する。 これは我々人類にとって大きな糧になることは間違いない。 だが彼らが友好的ではない場合どうするのか? それが問題だ。 月人との遭遇は我々が考える宇宙人像を大きく刷新することとなった。 これまで我々は人間の姿をした宇宙人…

□月 ●日  No969 ボスの回顧録

博麗霊夢が月から帰還して早半年となる。 想定された感染症や思想改造の類もなく、能力面も特に問題はない。 月人の生活に何かしら影響されて少しはしおらしくなったのではないかと期待したが、それは贅沢というものだろう。 保険として招聘(しょうへい)し…